鳥取から帰って翌々日に、子どもステージ『青い鳥』の稽古が始まりました。毎日電車に乗って稽古場に通うのも10年ぶりです。でも10年も経ったような気がしないのはどうしてだろうな。むしろ、10年前よりすっきりいろんなことが見渡せるような気もしているのが不思議です。
さてこの『青い鳥』というお話は、意外と知られてないかもしれませんが、クリスマス・イヴの夜が舞台になっています。貧しい木こりのおうちのチルチルとミチルの兄妹はクリスマス・イヴの夜、今年はサンタクロースはプレゼントをもってきてくれないと母親から知らされ、お金持ちの隣家のクリスマス・パーティの様子を羨ましくのぞく、というところからはじまります。
今回われわれの『青い鳥』は現代風にしているところもあって、チルチルミチルがのぞくのは隣家ではなく、テレビの中のきらびやかなクリスマス・パーティ。そこに魔法使いがあらわれ、自分の病気の娘のために青い鳥を探す旅に出てほしいと2人に頼みます。
お供は犬のチロと猫のチレット。そして「光」。原作では、火や水、パンや砂糖の精も一緒ですが、円子どもステージの上演枠は1時間20分なのでそれに応じてお供は3人にカットしています。
まず2人が向かった先は、亡くなったおじいさんとおばあさん、弟妹のいる「思い出の国」そこで懐かしい家族との再会を果たし、旅が始まります。
今回の作品は、生の舞台と映像を組み合わせた構成で、ここは映像のシーンになります。
写真:「思い出の国」でおばあさんのスープを食べる。
次に2人が青い鳥を探しに向かうのは自然の秘密の番人である夜の女王の国。青い鳥を人間にわたしてはならないと、ひそかに2人の旅の邪魔をするのは猫のチレットです。猫は光の目を盗んで2人を夜の森に誘いだし、子どもたちを人間に恨みをもつ森の木々や動物たちに襲わせます。
「幸福の楽園」ではご馳走食べ放題、サンドイッチマンの「ウマーベラス」にのってカラオケでおおはしゃぎする太った幸福たちの宴会に招かれたり。
写真:太った幸福たちの世界。
そうして旅の最後にやってくるのは「未来の国」。そこは、生まれる前の赤ちゃんたちが、地球に降りていく時にもっていくものを準備しながら過ごすお空の国。そこで2人はこの世界に生まれ生きることの不思議、せつなさ、喜びを知ることになるのですが。今回わたしたちの『青い鳥』では、このあとに小さなオリジナルのシーンをひとつ付け加えました。
写真:「未来の国」で不思議な出会いを体験するチルチルミチル。
写真:その日地球に生まれる子どもたちを運ぶ船を運航させる「天使」大窪あきら氏。稽古場にて、ただいま稽古中。
そうして旅を終えたチルチルミチルは、クリスマスの朝、自分たちの家で目を覚まします。
そこに魔法使いにそっくりな隣家のおばさんがやってきて、病気の娘にチルチルの青い鳥をもらいたいと告げるのでした。
このお話は旅から帰ったチルチルが朝目を覚ますと、自分の家に青い鳥がいた、幸せは身近にあるもだというふうに認識されていることが多く、わたしもその1人だったのですが、じつはそんなに単純なお話ではなかったのです。
『青い鳥』はとてもなぞめいたお話なのです。作者のメーテルリンクはこのお話の中でわたしたちにとってもすてきな謎を投げかけています。さて、この謎に観客のみなさんはどんな答えを出すでしょう!?
「幸せ」とはなにか、また生まれることの意味に焦点をあてた『青い鳥』になっています。わたしたちから観客のみなさんへのクリスマス・プレゼントとして、青い鳥の聖夜を過ごしていただけたらとても嬉しいです。