阿部初美のブログ

演劇の演出家です。

クリスマスイブの「青い鳥」

鳥取から帰って翌々日に、子どもステージ『青い鳥』の稽古が始まりました。毎日電車に乗って稽古場に通うのも10年ぶりです。でも10年も経ったような気がしないのはどうしてだろうな。むしろ、10年前よりすっきりいろんなことが見渡せるような気もしているのが不思議です。

さてこの『青い鳥』というお話は、意外と知られてないかもしれませんが、クリスマス・イヴの夜が舞台になっています。貧しい木こりのおうちのチルチルとミチルの兄妹はクリスマス・イヴの夜、今年はサンタクロースはプレゼントをもってきてくれないと母親から知らされ、お金持ちの隣家のクリスマス・パーティの様子を羨ましくのぞく、というところからはじまります。
今回われわれの『青い鳥』は現代風にしているところもあって、チルチルミチルがのぞくのは隣家ではなく、テレビの中のきらびやかなクリスマス・パーティ。そこに魔法使いがあらわれ、自分の病気の娘のために青い鳥を探す旅に出てほしいと2人に頼みます。
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写真:「思い出の国」でおじいさんと再会

お供は犬のチロと猫のチレット。そして「光」。原作では、火や水、パンや砂糖の精も一緒ですが、円子どもステージの上演枠は1時間20分なのでそれに応じてお供は3人にカットしています。
まず2人が向かった先は、亡くなったおじいさんとおばあさん、弟妹のいる「思い出の国」そこで懐かしい家族との再会を果たし、旅が始まります。
今回の作品は、生の舞台と映像を組み合わせた構成で、ここは映像のシーンになります。
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写真:「思い出の国」でおばあさんのスープを食べる。

次に2人が青い鳥を探しに向かうのは自然の秘密の番人である夜の女王の国。青い鳥を人間にわたしてはならないと、ひそかに2人の旅の邪魔をするのは猫のチレットです。猫は光の目を盗んで2人を夜の森に誘いだし、子どもたちを人間に恨みをもつ森の木々や動物たちに襲わせます。
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写真:「森」でチルチルミチルを襲う動物たち。ただいま稽古中。

「幸福の楽園」ではご馳走食べ放題、サンドイッチマンの「ウマーベラス」にのってカラオケでおおはしゃぎする太った幸福たちの宴会に招かれたり。
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写真:太った幸福たちの世界。

そうして旅の最後にやってくるのは「未来の国」。そこは、生まれる前の赤ちゃんたちが、地球に降りていく時にもっていくものを準備しながら過ごすお空の国。そこで2人はこの世界に生まれ生きることの不思議、せつなさ、喜びを知ることになるのですが。今回わたしたちの『青い鳥』では、このあとに小さなオリジナルのシーンをひとつ付け加えました。
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写真:今日生まれる子どもたちを船に乗せて地球に送る「時のおじいさん」。
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写真:「未来の国」で不思議な出会いを体験するチルチルミチル。
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写真:その日地球に生まれる子どもたちを運ぶ船を運航させる「天使」大窪あきら氏。稽古場にて、ただいま稽古中。

そうして旅を終えたチルチルミチルは、クリスマスの朝、自分たちの家で目を覚まします。
そこに魔法使いにそっくりな隣家のおばさんがやってきて、病気の娘にチルチルの青い鳥をもらいたいと告げるのでした。
このお話は旅から帰ったチルチルが朝目を覚ますと、自分の家に青い鳥がいた、幸せは身近にあるもだというふうに認識されていることが多く、わたしもその1人だったのですが、じつはそんなに単純なお話ではなかったのです。
『青い鳥』はとてもなぞめいたお話なのです。作者のメーテルリンクはこのお話の中でわたしたちにとってもすてきな謎を投げかけています。さて、この謎に観客のみなさんはどんな答えを出すでしょう!?
「幸せ」とはなにか、また生まれることの意味に焦点をあてた『青い鳥』になっています。わたしたちから観客のみなさんへのクリスマス・プレゼントとして、青い鳥の聖夜を過ごしていただけたらとても嬉しいです。


産み育てを考えるWS(第2週目)in鳥の演劇祭

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昨日、2週末にわたって開催の全8回のワークショップを終えて帰宅しました。
ご参加いただいたみなさま、準備を整えサポートしてくださった鳥の劇場のみなさま、本当にありがとうございました。
2週目のスタートは鳥劇のある鹿野の町から車で15分くらい?、山陰本線の「浜村」駅近くにある気高町子ども食堂くるりから。残りの3日間は鳥劇近くにオープンした鹿野町のしかの宿山根町にて。今年はこの2週間のWSでずいぶん鳥取の子育て事情が見えてきました。


1日目 11月1日(金)18:30ー21:00 
気高町スマイルセンター子ども食堂くるり

参加:Bさん(2児のパパ)、Yちゃん(5歳男児のママ)、Yさん(3児のママ)、Kさん(2歳男児のママ)、Mさん(女児のママ)、鳥劇俳優の大川さん

18時から子ども食堂がオープン。われわれも食堂で大人200円、子ども無料の手作りごはんをいただいて、18:30からワークショップスタート。利用者さんの参加が3名と少なかったのは、WSに参加しようとすると食事の時間が30分しかとれなかったり、小さな子どもたちを膝の上や隣の席に座らせて面倒見ながらの食事は簡単に席を立ちにくい状況だったり、毎週会う友人と話がしたいとか、聞いたことのないイベントへの警戒心もあったと思う。興味をもってくれた方も、子どもが離してくれなかったり、「21時までは無理」という声もあった。みなさんはだいたい20時半頃に帰宅されるというから時間帯も難しかったのかもしれない。利用者のほとんどは母子で、たいていは小さな子どもを2~3人連れて来られている。お隣の席の方に聞くと「パパは仕事」とのこと。金曜なので母子はここで食べて楽をして、パパたちは飲みにいく、という感じなのかなと想像する。
それでもご参加くださった3名の方の1人はこの日子ども食堂初利用という小学校で先生をされているパパ(男性利用者はこの方お一人)、3人のお子さんのママ、1人のお子さんのママでした。
関心事をそれぞれ書いていただいて、3人ずつのグループに分かれて人形劇を作ることに。

グループ1 みんなさみしい
お盆で実家に帰省してきた姉と弟、それぞれ家庭をもち子どもたちも一緒。子どもと孫を喜んで迎える親(おじいちゃん、おばあちゃん)が姉と弟に近況をたずねる。
姉は3人の子どもを育てているが、上の子が小学校に入学し、将来の子どもたちの自立の予感を感じ、子どもたちがいずれ自分のもとを離れていくことを想像して今から子離れできるかどうかを不安に思っているとうちあける。「子どもはみんな出ていくのよ、あんたたちだって出ていったじゃないの」とおばあちゃん。
一方、弟は2人の子どもを育てているが、下の女の子をついかわいがってしまい、上のお兄ちゃんがさみしい思いをしているのではと危惧している。姉は「上の子」として、下の弟ばかりかわいがっていたと両親(おじいちゃん、おばあちゃん)を責める。「そんなことはない💦」とあわてるおじいちゃんおばあちゃんは「それよりあんたたちももうちょっと実家に帰ってきなさいよ!わたしたちだってさみしいのよ!」と言う。
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上演後の話し合い
やはり子離れはとても辛いと言う人が多い。子離れに向けて親も趣味や仕事などを見つけたり心の準備をしていった方がよさそう。上の子と下の子、両方かわいがっているつもりでも上の子がさみしい思いをしている場合が多い。上の子にもたくさん愛情をかけるべし。

グループ2 ママになって
イケてる独身生活を楽しんでいた頃の様子。結婚して子どもを産むと、、、家事育児に追われ、夫の協力は不十分。どんどん黒ママになっていってしまう。
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上演後の話し合い
独身時代のイケイケなシーンが入っていたのがよかった。その後の変化が際立つ。一見すると独身時代の方が楽しく、よかったと感じられるかもしれないが、子どもを産んでからは子ども優先の生活になり、他者(子ども)のために自分を犠牲にするという経験を通して実は楽しかった独身時代よりも人として成長しているのでは。エゴからの解放。
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この日も出てきたのはパパの家事育児への協力の不足問題でした。


2日目 11月2日(土)10:00−12:30 
しかの宿山根町

参加:Aちゃん(5歳、3歳、1歳のママ)、Mちゃん(2ヶ月の赤ちゃんのママ)、Hさん(75歳)、鳥劇れなぞうさん(7歳女子のママ)

この日のメンバーはそれぞれ状況がバラバラで、たまには子どもの真似をしてみるとか実況中継してみるとか子どもに寄り添うワークショップをやってみてもよかったけれど、演劇祭真っ只中で場所の確保が難しく、山根町のキッチンとリビングはせまくてモノもいろいろあって、そういうワークショップをすると走り回れるようになった年頃の子どもはものすごくはしゃいでしまって危険がともなうので、子どもたちが元気に動き回る中で、子どもにイライラしてしまうれなぞうさんとAちゃんのペア、75歳のHさんと2ヶ月の赤ちゃんのママMちゃんのペアで今日も人形劇。

グループ1子どもにイライラ
子どもの意思を尊重したり発達段階に応じた子育てを提唱するモンテソーリ実践中のママ。好きなテレビを見終わるまでお風呂に入りたくないという子どもの意思を尊重し待つが、テレビが終わるとおじいちゃんと遊びはじめてしまい、イライラしてしまう。子どもはそういうものなのに、イライラしてしまうわたしおかしい?

グループ2子育ての苦労と喜び、街頭インタビュー
Mちゃん・妊娠、出産、2ヶ月の赤ちゃんを育てながらこの人生の大きな体験で自分の心と体の大きな変化を感じている。独身時代、「弱者」をどこか他人事のように感じていたけど、初めて自分が「弱者」の立場を経験して他人事ではなくなった。子どもたちが育って生きていく「社会」を考えるようになった。100年後の世界はどうなっているのか。
Hさん・子育ては子どもを育てるが、自分も子どもに育てられる。新しい経験をたくさんさせてもらえる。
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上演後の話し合い
まだ、どこか神聖な感覚のある出産を終えたばかりのMちゃんにとって子どもにイライラする日々は未知の世界。数年後には自分もこうなっているのかも!?日々3人の子どもの世話におわれるAちゃんにとって「100年後」のことを考えられるMちゃんすごいな!バラバラな状況だからこそお互いの状況や思いを知る新鮮さがありました。演劇の視点からみると、「イライラするのはおかしい」のではなく、それが人間であり、そういう心の動きがあるということをまず認めて受け入れていく、ということになります。演劇は人間のあらゆる感情や思考の可能性を、目をこらし、心をすましてキャッチし、それを身体なりなんなりで表現していく芸術であるとわたしは考えています。

3日目 11月3日(日)10:00−12:30 
しかの宿山根町

参加:演劇祭の研修生の若手演劇人3名、Kさん(2歳男児のママ)、鹿野へ移住を決めたご夫婦YさんとMちゃん(2ヶ月の赤ちゃん)、Yちゃん(5歳男児のママ)、Hさん前半のみ参加(75歳)

演劇祭の研修生3名が参加してくれました。ワークショップや作品で積極的に社会と関わりたいという若手演劇人がこんなにいるのに驚きました。演劇人たちの意識もだんだん変わってきてるんだなあと実感。
まずみなさんに関心事を書き出してもらって質疑応答からスタート。最初から積極的な話し合いになり、長い時間質疑応答を続ける。たとえばYさんからはジェンダー問題、男には育児や家事ができないと最初から決めつけられバカにされてる感じがする(ちょっとしたことをしただけで「お父さんなのに立派ですね」と褒められたり)。未婚の女性の研修生から「いつ産む?ライフプランは?」という疑問、遅くなると育児と介護が重なったり、産んだ後の体力がなく辛い。またライフプランを立てても子どもが生まれるとその通りにいかないことが多い、むしろその不自由さを楽しめるといいなどの意見。
話をしばしした後、ミニワークショップをひとつ。いちばん古い記憶を思い出して1人ずつ話す。大人になると子どもだった頃を忘れ、子どもの心に寄り添うことが難しくなってしまいますが、こうして自分が子どもだった頃の記憶をたどることで、子どもの心を思い出し近づくことができたりもします。
演劇では強い感情や印象をともなう記憶は古いものに多く、それを使って自分の感情を動かすという俳優のトレーニングなどもあります。
その後は、同時期開催中の札幌の櫻井幸絵さんがファシリテートする産み育てWSで製作された札幌の子育て事情を表現した人形劇を4本、みんなで観劇後、札幌に感想を書いて送りました。
〜札幌バージョン〜
グループ1「いつ産んでもいい」若い時に産んでも、年とって産んでもそれぞれメリットはある
グループ2「同じ保育園の親が気になる」隣の芝生は青く見える
グループ3「名もなき家事」子沢山の家庭、夫は全く家事育児の協力をしない
グループ4「一人っ子」みんなで親戚みたいなコミュニティが作れたらいいね

4日目 11月4日(日)10:00−12:30 
しかの宿山根町

参加:Yちゃん(5歳男児のママ)、Fさん(7歳男児のママ)、Sちゃん(3歳児のママ)、Tさん(10代後半と20代のママ)、Hさん(75歳)、鳥劇の佳子さん

低年齢の子どもを育てるママが3人そろい、子どものへ社会のルールの教え方、しつけなどに悩みや疑問をもつという共通点があり、それをテーマに3人で人形劇製作。かたやある程度成長したり自立したりしている子どもをもつTさんとHさんと佳子さんの3人グループで人形劇を製作。

グループ1:社会のルール、どう伝えればいいの?
Sちゃんの場合・スーパーにて。子どもが売り物のぶどうを食べてしまう。仕方なく買ってすぐ車に子どもを連れていって叱る。夜、子どもの寝顔を見ながら反省。周囲の人の目が気になって車に連れていって叱るけど現場でその時叱った方がいいというし、そんなことするならもうご飯食べさせてあげない!と言ってしまったり、自分の叱り方はこれでいいのかな。。
Fさんの場合・スーパーにて。ほしいものは1つだけ買うと約束したのに2つ買うと言ってきかない子どもにイライラし、やはり車に連れ帰って説教する。家に帰ってもイライラがとまらず、その後も子どもに冷たく接してしまう。夜、子どもの寝顔を見ながら反省。大人に説教するみたいにしてしまうし、後にひきずってしまうし、どうにかならないかな。。
Yちゃんの場合・スーパーにて。ガチャガチャをあきらめない子どもにその場で説教。その後もイライラしてしまい子どもが近寄ってきても「イライラするから近寄らないで」と言ってしまう。子どもはしょんぼり「ごめんなさい」と言う。夜、子どもの寝顔を見ながら反省。叱り方はこれでいいんだろうか。。子どもに母の思いは伝わっているのかな。。
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上演後、先輩ママ方から「よくわかる」「同じ経験をしてきた」「叱らない親よりはぜんぜんいい」「わたしは悲しい、とかわたしはこう思う、と子どもに伝えていくのがいいと言いますね」「子どもにはその場で叱らないと伝わらない、周囲の目は気にせず、自分の信念をもって、子どもを思うなら後でではなく現場で叱るべき」などの意見。
子どもをかわいいと思い愛する気持ちと子どもの言動が許せずイライラする気持ち。子育ての中で親の気持ちはたえず揺れているけれど、その揺れは必要不可欠なもの。「子育てはこれでいい」と我が身をふりかえることのない子育てはおかしいでしょう?という北九州の先輩母の言葉にわたし自身も救われたことをお伝えする。その揺れの中から自分の信じる道を探していくしかなく、それがやはり人としての成長につながっていくんですね。
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グループ2:理想の社会
Hさんの食堂には今日もいろんな人がきます。親子、作った野菜を届けてくれる近所のおじさん、受験生。そんな人々をHさんはやさしく迎え、みんなの居場所になっています。
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上演後の話し合い
いまの社会は本当に希望がなく、杓子定規なルールばかり。みんなで理想の社会を作っていけたら本当にいい。子育て真っ最中のママたちからは今のこのたいへんな時期を乗り越えて、先輩ママたちのように理想の社会について考えられる境地にいきたいという感想。社会はすぐには変わらないけど、だからと言ってなにもしなければ本当になにも変わらない。そのために自分はなにができるのか、半歩ずつでもいいからそれぞれが歩いていけたらいいですね。
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FM RADIOBIRDでも鳥取の子育て事情についてご報告

鳥取東部子育て事情

今年は、二週間、8回のワークショップを通して鳥取東部の子育て事情が垣間見えてきました。
それはおもに以下2つ。
1、地元が鳥取東部のパパは家事育児協力に積極的ではない場合が多い。
2、育休1年での途中入園希望者が多く、その背景にはそれ以上休みをとると会社の人たちから白い目で見られるという事情がある。

1について、移住者のファミリーは鳥取の自然がいっぱいの子育て環境のよさの満喫しているようでしたが、地元出身のパパをもつママは夫の家事育児協力のなさに不満を抱えているケースが多く、このテーマはWS中たびたび表れてきました。平日、子育て支援センターでのWSに参加して、「また参加したいけど、夫はこういうのは好きじゃないし、夫を置いては来られないから土日の参加は無理だなあ。。。」というママの声がよく聞かれたり。そういう事情もあって、土日祝開催の山根町でのワークショップ参加者は、移住者のファミリーと、お休みの日もパパが仕事でいない家庭のママと子ども、子育てが一段落した世代、ととても少なめ。平日は子連れのママがたくさん参加してくれました。
鳥取(東部)でみなさんの話を聞いてだんだんわかってきたのは、男と女の世界、役割分担のようなものがはっきり分かれているということ(例えば軽作業は女の仕事、力仕事は男の仕事とか。PTAは女の仕事とか)。共働き率の高い鳥取ですが、やはり家事育児はママの仕事、という意識が強く、子どもが熱を出しても仕事を休むのはママ、と決めつけられ、仕方なく休みをとると、翌日会社での周囲の目が気になる、休みすぎだとか、何を言われているかわからず怖い、というママの発言が目立つ。
これまで他地域でもママの孤軍奮闘はよく出てきたテーマではありますが、気持ちはあってもそうできない理由を抱えたパパたちも多く登場してきました。それに対して今回表現されたのは、それはママの仕事、とどこか決めているようなパパたちの姿だったのかな。もちろん少数派ではありますが、家事育児しっかりしてる地元鳥取パパもいるにはいました。
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2について、こんなに途中入園ができない悩みが話題になる地域は初めてでした。鳥取では、4月入園の場合はだいたい問題なく入園できるそうです。なのに育休きっちり1年で復帰しなければならないとこんなにも焦る後ろには、そうでないと会社で白い目で見られる、「前のお母さんはこうだった」と言われてしまうと何も言えない、という思いがありました。病気の子どもの面倒を見るために会社を休んで白い目で見られるのもママたちなら、育休1年あけて途中入園させられず復帰が遅れて会社で白い目で見られるのもママたち。これはママたちのストレスはけっこうなものじゃないかと想像できます。
もう一世代前の鳥取女性たちは、PTAなどの仕事でつながって、そこでできた仲間と女子会で飲みにいってストレスを発散していたという話を去年のワークショップで聞きました。

この産み育てを考えるワークショップ、鳥取でも需要がある気がする、と開催にこぎつけてくださったのは鳥劇制作の佳子さんでしたが、その予感は的中でした。演劇祭のホストで大忙しの中、WSの準備に奔走してくださった鳥劇のれなぞうさん、ちょこちょこ参加してサポートしてくださった同じく鳥劇俳優の大川さんにも本当に感謝です。
最終日の昨日、終わって佳子さんに見えてきた鳥取子育て事情をご報告すると、働かない人を白い目で見る、鳥取東部の、あまり遊ばず真面目な気質の背景には、わたしは鳥取の1918年の地震と1952年の大火の2つの災害の影響があるんじゃないかと思うと佳子さん。これを経験したのが今70代の人たちで、この2つの災害で町は壊滅的な打撃を受け、2度の復興を必死に成し遂げてきて、遊ぶ余裕なんてなかっただろうし、そんな経験から働かない人(専業主婦や育休を長くとる人、子どもの世話で会社をよく休む人)に対して「なんで働かないの?」と白い目でみるような雰囲気ができてきたのでは、という分析だった。
だいたいこのワークショップはやって終わり、になる場合が多いが、見えてきた地域の課題に次の手を打とうと考え始めるのは、鳥劇の中島さんがやはり「地元」とつながって活動する人だからだろう。
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シェイクスピアは、演劇は鏡のように世界を映し出せと言ったけど、人は鏡を見て初めて己の姿を知ることができるんですね。

産み育てを考えるWS(第1週目) in 鳥の演劇祭

今年もやってます!

産み育てを考えるワークショップ
in 鳥の演劇祭2019

古民家が立ち並ぶ風情ある城下町・鹿野の町を拠点に毎年開催される鳥の演劇祭で、今年も産み育てを考えるワークショップをやらせていただいてます。
2年目の今年は、子育て支援センター「カンガルー」、しかの宿「山根」、気高子ども食堂の三ヶ所で、2週末にわたっての開催です。
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第1週目の先週、平日は子育て支援センター、土日はしかの宿で開催しましたが、子育て支援センターは満員御礼に近い状態、しかの宿は2~3人の少ない人数でがっつり、という形になりました。
今回は参加者のみなさんのお話から、この平日と土日の人数の落差も鳥取ならではの事情が見え隠れしていることがわかってきました。
4日間のワークショップをふり返ってみたいと思います。

1日目10/25(金)10:00-12:00 子育て支援センター「カンガルー」
乳幼児連れのお母さんを中心に12名ほど。それに後期高齢者のHさん(8回全参加予定)。いつものように全員の名前をあだなで覚えるゲームからスタートし、参加者お一人お一人に「産み育て」について関心のあることを書いていただき、その紙を並べてみんなで見て、詳しい話を聞いてみる。去年のワークショップでは人数が少なくあまり鳥取の様子がわからないままだったので、このお話に30分以上さいたが、0~2歳くらいまでの元気な子どもたちの声で、お互いの話が聞き取りにくく💦集中が保ちにくい状況になってしまいましたが、それでも共働きや専業主婦について、それぞれその理由などを中心に話を聴きあう。この日は12時までの参加者もいたので、他者とのコミュニーケーション、距離、未知の世界の歩き方などについての気づきをうながす体を使ったゲームさらりと2つほど。初参加の人がほとんどなので簡単な紹介にとどまる。

2日目 10/26(土)10:00-12:00 しかの宿「山根」
乳幼児連れのファミリーと毎回参加の後期高齢者Hさんの3名。妻はまもなく1年の育児休業を終えて仕事に復帰しようとするが、途中入園できる保育園はなく、4月まで待たなければならない状況。夫はそれならいっそ職場復帰をのばしてもっとゆっくり子どもと過ごしたら?と勧めるが妻はとにかく少しでも早く復帰したく意見がすれ違っていて、これを人形劇にすることに決める。
夫は自分の母親が専業主婦でいつも家にいて、手作りのおやつ、手作りの服などたくさん愛情を受けることができてよかったから、妻にもそうしてほしい思いがある。妻も理想はもう少し子どもといたいが会社に迷惑がかかる、気まずい雰囲気になる、「他のお母さんはこうだった」と言われるとなにも言えなくなるという。ちなみに途中入園できず困っているという話は1日目にも2人くらいの人から出ていたがやはり同じような理由からだったんだろうか?妻の両親は共働きで彼女は1年生から学童にあずけられていて、1年生の時はやはり寂しかったが、それ以降は学童でたくさんの経験をさせてもらえてよかったという。かたや75歳のHさんは女性だって働くのは当たり前、というこの世代にしては先進的な女性で、母親が働いて一緒にいられる時間は少なくても、「しっかり愛情をかけさえすれば大丈夫、自分で実証済み」という。劇にすることで、ご夫婦それぞれの考え方の背景がでてきた。こうしてみんなでご夫婦の問題を共有させていただいたことで、相互理解や次の一歩への道しるべが少し見えてきたらいいなと思う。

3日目 10/27(土)10:00-12:00 しかの宿「山根」
乳幼児連れのリピーターお母さんKさんとHさんのお二人。Kさんは去年も参加されて今年2年目。ひさしぶりに会った子どもKちゃんは2歳になってずいぶん大きくなった〜。去年、子育ての時にそばにいてほしいのは、同じ乳幼児子育て中のお母さんじゃなくて、おばあちゃんのような人、と言っていたような記憶があったので、「第三者としてどういう支援をしたらいいのかわからないから勉強しに来ました」と言っていたHさんの組み合わせはとてもよかったと思う。大阪の詩人の上田さんの子どものKちゃんが遊びに来てくれていて、小4のKちゃんも一緒に作品作れたらいいなという気持ちもあったけど、前の二日間ほぼHさんの思いに触れられなかったので、この日はHさんスペシャルデイに決めてスタート。子育て世帯にはどんな支援が必要?をテーマに人形劇を作りましょうと提案。よくよく聞くと、Hさんの次女に第2子が生まれるので、お手伝いに行く予定で、次女は第1子の時、赤ちゃんのお世話にことは全くHさんに聞かず、全部スマホで調べていて、自分はなにをしたらいいのかわからないと悩んでおられたのでした。そこへKさんが「ただ、いてくれればそれでいいんです」と、たくさんの同じ思いをもつお母さんたちの思いを代弁して伝えてくれた。やはり赤ちゃんのお世話の仕方は時代でだいぶ変わってしまったし、産院やパパママ教室で教えられることの方を信じるお母さんが多いので、それがぶつかる原因になるが、お母さんが求める支援は「そばにいてくれること」。できるならば、ご飯の支度や掃除洗濯などの家事はやってもらえると助かるかもしれませんねとお伝えすると、どこか固かったHさんの表情は、ほんとうに芯からほぐれていった。

4日目 10:00-12:40 子育て支援センター「カンガルー」
この日は乳幼児連れのお母さんたちをメインに俳優も多く参加。鳥の劇場の大川さん、山の手事情社のとのさん、円のたかみとうっしーの4人で満員御礼。遅刻や飛び入り参加もあって、20分ほど遅れてスタート。人数が多いので土日のようにがっつりはできないけど、カンガルー1日目で出た話題を掘り下げるために人形劇を作ってみることにする。多くでた3つの関心事「子育てと環境」「仕事と家事育児の両立」「子育て中の親子にどう関わったらいい?」をテーマに1グループ5人で製作。作品内容は以下。
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1、子育て環境
シーン1:隣近所から子どもがうるさいと言われて困る、三人の子持ちファミリー。
シーン2:子連れで買い物するママ。年配女性から声をかけられ、女の子なのに水色の服はかわいそうとか、スーパーは冷えるから赤ちゃん風邪引くわよといらんお世話をたくさん言われる。
シーン3公園で遊ぶ親子たち。木登りする子どもを危ないからとやめさせもっとやりたいとせがむ子どもを無理やり連れて帰ってしまうママ。
シーン4:以上3つのシーンの体験を愚痴るママたち。愚痴を言える人がいるっていいね。
(このグループは移住者が多く、それぞれのエピソードは鳥取ではなくよその土地の話がほとんど。鳥取は育てやすいねと思っているとのこと。)

2、仕事と家事育児の両立
シーン1:子どもが三人いる、ある家庭の朝。末っ子の赤ちゃんが熱をだす。パパとママ、どちらが会社を休むかで口論。パパは大事な仕事だから休めないと決め、その代わりゴミくらい出しておいてあげるから、お皿くらい洗っていってあげるから、と少し家事をして会社に行ってしまう。
シーン2:末っ子のお熱で会社を休んだママは翌日出社すると、会社のみんなの白い目が気になる。
シーン3:子どもが二人いるまた別の家庭の夜。帰宅したママが急いで夕飯作り。子どもたちは手洗いうがいもせずに騒がしく、そこにパパ帰宅。疲れてるから休ませてと休む。イライラ💢してついつい子どもや夫にあたるママ。

3、子育て中の親子にどう接したら?
シーン1:ある親子が乳幼児を連れたママに挨拶をするが挨拶がかえってこない。
シーン2:孫のいるおばあちゃんが乳幼児連れのママに挨拶するがまた返しなし。
シーン3:挨拶を返さない乳幼児連れのママのモノローグ。どう接したらいいのかわからないわ。

遅れてスタートしたこともあり、発表して感想を聞くまではできたものの、それぞれの問題にどう向き合ったらいいか、どう解決したらいいかを話し合うところまではいけず、3つめの挨拶しないお母さんにどう接したらいいか、自分の子どもに「なんであのお母さん挨拶しないの?」と聞かれた時になんて答えたらいいのか考えてしまうという感想があったので、それだけみんなで考えてみました。挨拶をしないのはなぜ?俳優の仕事のごとく、みんなでその人の気持ちになって考えてみました。知らない人に余計なことを言われたくない、子どもを不審者から守らなければと思っている、どう接したらいいかわからなくて困っている、などの理由が考えられました。挨拶を返されなくてもいいと思って挨拶を続ける、などのアイデアも出ました。
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第1週はこんな感じの4日間でした。第2週の今週は金曜の気高町の子ども食堂くるりからスタート、初の夜開催です。去年ご参加くださった子ども食堂を運営されているOさんが「気づきが多かったからぜひうちでも」とお誘いくださり、感謝です。普段は50人くらいの親子が利用しているとのこと。いったい何人でどんなwsができるんでしょう?若干不安はありますが💦やれることを探ってみたいと思います。
土日月の三連休はしかのやど「やまね」で10:00-12:00(希望者でランチ)です。お気軽に遊びに来てくださいね〜。

なお今回は、同時期開催中の札幌「産み育てを考えるws」と、それぞれのワークショップの様子を紹介するビデオレター交換もします。先週それぞれ撮影した作品を送り合い、今週のどこかで鑑賞、感想を送ります。

鳥の演劇祭、併催のBeSeTo演劇祭、面白い作品がそろってます。ボランティアスタッフも大募集中です!ぜひぜひ鳥取へ〜


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