阿部初美のブログ

演劇の演出家です。

学級崩壊!?

先月、学童保育で演劇ワークショップをやりました。
1回目が小学校1年生のみ6名程度、2回目が小学校1年生から5年生まで15、6人。

だいたいこれまでのワークショップは小学校高学年からが対象だったので、それ以下は今回が初めて。小学1年生は日本語通じるのか~?と思っていましたが・・・通じました、がしかしけっこう宇宙人的でした。
「これからゲームをやります、はい、みんな立って~」というと、「ヤーーダーー!」
・・・とにかく立つのがイヤなご様子。
それでも保育士さんたちのアシストで、なんとか立たせてシアターゲームは始められたものの、少しするとまたいつのまにか全員が床にべた~っと転がっている。
でさらに「もうツカレターー、もういっかいでやめにしてーー」
たった6人でこんな調子なんだからこれが何十人も集まった学校で、担任の先生ひとりだったらそりゃ学級も崩壊するわな~。
とにかく子どもたちは見ているのである、この大人はなめていい大人なのか、なめてはいけない大人なのかを。新学期が始まると、この品定めはだいたい1週間続き、そこでもう関係が決まってしまうということなのでした。「宇宙人」というよりも「動物」??

なぜ小学校1年生の学級崩壊がおこるようになったのか、とても興味深い話を支部長からお聞きした。「ゆとり教育」が学校で導入されたのと時期を同じくして、幼稚園でも「のびのび教育」なるものが導入されたということだった。「ようするに、ほったらかしですよ」
規律を守ることを学ばずに育った子どもたちが、小学校に入ってとつぜん机と椅子に一日拘束されて規律を守るように言われても、そりゃーなかなかそうもいかないだろうなーということは想像がつきますね。この現状に対して、品川区が対策に取り組みはじめたと朝日新聞にありましたが。

さてシアターゲームの方はというと、やっぱり小学校1年生くらいだと、脳からの神経回路と体がまだスムーズにつながっていない感じで、体の動きがとってもぶきっちょ。いつもやってるゲームを少し簡素にして、できるところから少しずつ進めていきましたが、とにかく、そのように体が動けた、というだけで、子どもたちにとってはスゴイことなのでした。
それから、「もうツカレター」と言い出す時は決まって、自分が主役になれていない時だということに途中で気づきました。大人向けのワークショップをやっていても、自分を見てほしい愛してほしいという欲求が強くあることを感じるけど、とくに核家族・一人っ子とかで育ってる子は、そういう欲求を抑制することを学ぶ機会は少ないんだろうな~。まああちこちで修正はされていくんでしょうが。

でゲームでの反応の大人との違いは、想像力、イメージする力の強さ。
抑圧からの自己解放や、自分についての発見や相手との関係作り、想像力、五感を開くことがだいたいシアターゲームの目的になっているのですが、今回は、子どもたちの自己はもう解放されっぱなしなのでこういうメニューは必要なし。自分への気づきは難しそうだけど、繰り返しやったらなにかあるかも?相手との関係作りのためのメニューで仕掛けとして「断崖絶壁の怖いところにいると思って」と言ったら、相手との関係よりもむしろ、その怖い場所についてのイメージがものすごくふくらんだようで、そのふくらみようにはちょっとびっくりさせられました。あんまりイメージする力が強くて、途中でほんとに怖くなって、逃げ出しそうになった子もいたほどでした。
最初の印象としては、子どもは、「天使」と「悪魔」が同居してる存在、って感じかな?

ちょっとながくなったので、2回目の1~5年生のワークショップについてはまたあらためて。つづく。


勿来高校・演劇部

ここ2週間ほど、いわき・川崎・福岡を行ったり来たりしてました。で今日はひさびさのオフでした、がたまった家事を片づけたら、もうすっかり夜です月

2週連続で訪ねたのが、福島県いわき市の勿来高校。目的は、演劇部対象の演劇ワークショップでした。
昨年秋のいわきアリオスでの『アトミック・サバイバー』、今年1月のいわき総合高校アトリエ公演の演出で、すっかり愛着のわいているいわきですが、勿来(なこそ)は一番南に位置する地区で、平(たいら)と呼ばれる市街地から車40分くらいのとこにあります。
学校この高校演劇ワークショップは、過去4年、山口県山口市で行っていたワークショップ(山口情報芸術センター主催)と同じシリーズで、今回の主催はいわきアリオスです。

クローバー4月のいわきは山の新緑が美しくて、空がきれいで、もしかしたら一年で最高の季節かも。
勿来高校演劇部の正式部員はたったの4人だったけど、入部を検討しているという高校生も含めて、毎日6、7人でのワークショップになった。
人数は少ないけど、顧問の松本先生を含めみんな積極的で、とっても充実したワークショップになった。
まずは初日の顔合わせで、ふだんの部活動で困っていることを聞く。
発声練習の方法がわからない、どうしたら面白い本が書けるようになるのか、演技がうまくできない、などなど。それらの困りごとを解決すべく、6日間のワークショップの内容を組んでいく。アシストしてくださるのは71才ベテラン俳優のノム(野村昇史)さまで、若い子と一緒にできて楽しいよーとお喜びのご様子。
部員のうち2人は声優志望で、山口でもそうだったけど、最近は中高生に声優志望の子が多い。俳優になりたいという子も多くて、どうしたらなれますかと質問されることも多いけど、そういう時わたしは、たいていは厳しい現状を具体的に話してやめるように説得する。
でもそれでもあきらめきれないという子のことは止めない。それくらいのモチベーションの高さと覚悟が必要だからだ。
で、いつも困らせられるのは、声優志望の子たちのアニメ的発声である。
口先だけの強い節のついたもの言いは、相手役になにかを伝えるための発語ではなく、それっぽく(アニメ声優っぽく)作り声でしゃべる自分に満足するための発語なのだ。
演劇の演技はたいていアンサンブルが大切なので、これを直すのに一苦労。。。
でも6日間のワークショップを通して、彼/彼女らは大きく変化していった。
ふだんの自分の行動や考え方に疑問をもったり、新しい自分に出会ったり。
「自分について、たくさんのことに気づいた」
高校生の変化や成長ははやい。

ワークショップのついでに、ひさしぶりにいわき総合高校を訪ねると、つい最近まで2年生だった10人はもう3年生になっていて、みんななんだかひとまわり大きくみえた。
演劇を通して、彼/彼女らも成長したのだ。
こういう姿を見るのがとにかくうれしい。
石井先生ともひさびさに再会ハート

最後は勿来の関の湯温泉大波大波オーシャンビュー!)につかって、地元スーパーのマルトで福島の地場野菜をたくさん買い込んで帰りました。チューリップとにかくおいしいんですよ~、野菜が(JA直売所の方がもっとおいしいそう、どんなだ!?)。魚がもって帰れないのが残念ですが魚

いわきのみなさん、今回もいろいろお世話になりました。
お互い元気で過ごしましょう、またよろしくお願いします~。


『更地』美術

今日は、6月に川崎市アートセンターで上演する、太田省吾作『更地』の美術打ち合わせでした。
美術を担当してくださるのはなんと、もと「ダムタイプ」で、美術を担当し、今は美術作家として京都を拠点に活動されている小山田徹さん。

前にも書きましたが、『更地』は、わたしにとっては20代ずっとともに過ごしてきた作品で、台本を開けば条件反射で(岸田)今日子さんと瀬川哲也さんの声や表情、空間が鮮明に思い出されてしまい、どうしたらそこから逃れて新しい『更地』を発見することができるんだろうと、ここ数ヶ月の間ずっとこの難問に頭をかかえていました。
あんまり悩んでいるわたしを心配して、アートセンタースタッフが、美術に小山田さんはどうかと推薦してくれたのですが、ネットで小山田さんと熊倉さんの対談「特集アートカフェ」を読み、小山田さんの活動にとても興味がわき、引き受けてくださるならぜひご一緒してみたいと思ったのでした。
しかしこんな状態で、小山田さんとどう話をしたものかと重い気持ちもかかえつつとりあえず覚悟を決めて美術打ち合わせにのぞんだのですが、小山田さんはなんと、すでにいくつかの美術プランを準備してきてくださっていたのでした!

小山田さんのプランを聞くうちに、ものすごくイメージがふくらんできて、テキストを開いても、もう今日子さんや瀬川さんの記憶は甦らず、そのかわり新しい風景がどんどん生まれてきて、小山田さんの美術で、一瞬のうちに今までの呪縛から解放されいくというすごい体験をしました。小山田さん、すごいです。
美術として成立させながらも、そこに俳優が立ったときまた空間が有機的に変化して、意味や物語をつむぎだしていくような、そんな舞台美術です。
これでやっと新しい『更地』が始められそうです。
ここのとこ引っ越し&新生活疲れで背中の神経痛がひどかったのですが、打ち合わせ終えて帰るころには背中が軽くなってたのでした・・・原因は『更地』だったのか!??

キャストもスタッフも稽古開始一ヶ月前にしてほぼ決まりました。

キャストは、下総源太郎さん(もと燐光群)と佐藤直子さん(もと演劇集団円)です。

下総さんとは初めてご一緒します。直子さんは、わたしのデビュー作『抱擁ワルツ』(これも太田省吾作)に以前出演していただいたので今度が2回目。
今回のメンバーと一緒に、どんな『更地』を作っていけるのか今から楽しみです。
よいスタートを作ってくださった小山田さんと川崎スタッフにあらためて感謝。




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