阿部初美のブログ

演劇の演出家です。

2009年06月

「更地」初日

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「更地」小山田徹さんの美術


初日が開けた。無事に。
客席はありがたいことに満席。
太田さんゆかりのなつかしい顔ぶれ、2007年秋のスパイラルホールでの、太田省吾を偲ぶ会以来かもしれない。みんなこの「更地」という作品を手掛けることのたいへんさをわかってくださっていて、太田さんの本を出版している五柳書院のOさんは、稽古の途中に「阿部ちゃんがノイローゼにでもなってるんじゃないかと思って」と心配して電話をかけてくださっていた。
今日は、「太田さんもOKだしてくれてるんじゃないかな」と言ってくださった。
そしてよくお世話になった太田さんの奥さんも、上演期間中の3日間、劇場に通ってくださることになった。お元気そうで、本当によかった。

まだまだ気は抜けないけど、とにかく無事に初日が開けて、体中の力が抜けました。

明日明後日のチケットはまだ少しあるそうです、が当日もけっこう出てるようなので、ご来場予定でご予約まだの方はぜひおはやめにご連絡をお願いします。






「更地」初日前夜

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「更地」小山田さんの美術

ゲネが終わった。
またハイリスクハイリターン問題がやってきた。
演劇のライブ性をいかそうと、いわゆる普通の演劇のように、「3歩あるいてこの位置で振り返ってあちらを振り向く」というような作りをせず、人物の核心になる部分を掘り下げて俳優と共有して、いろんな状況に対応できるような自由度の高い作りをしているのだが、こういう作りは、ほんとうにハイリスクハイリターンなのだ。
位置や動きやセリフの言い方をすべて決めてしまえば事は簡単で、最低線の出来は保証されるけれど、それはライブでありながらライブ性を排除する行為なんじゃないだろうか。
でも「振り付け」しなければ、大きなリスクを常に抱えることになって、今日のように初日前夜にがけっぷちに立つような状況にもなるし、最悪の場合、本番にこんな状況におちいることもありうる。毎回スレスレのところにいる。
より「完成度」が求められるようになりつつある現在、創造的であり続けようとすることはとても難しい。もっと妥協して、創造性よりも表面的な完成度を重視すべきなんだろうか。
ここ数年、ずっとこの問いの前で立ち往生している。

それでもとにかく明日幕は開く。

『更地』まもなく

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『更地』稽古場から

ここ数年来というか今までになかったような忙しさでした。。。
目標はとにかく楽日まで体調を維持すること。
まもなく『更地』の初日がやってきます。

今回は少しはやめに先週の土曜日に劇場入り・仕込みをさせてもらったのですが(感謝)仕込んでみると小山田さんの美術のオブジェ力の圧倒的な強さにびっくり!!
これまで稽古場で作ってきた芝居では成立しないということがわかり、翌日からこれまで積み上げてきたことをベースに作り直し作業に入りました。
ここ数日でなんとか拮抗・調和できる形になってきましたが、ホントあせりました。

『更地』は表面的には現代の夫婦を描き、普遍性がめざされているようなミニマルな作品ですが、その後ろにはやはり当時の社会背景が意識されています。今回も面だっては表現していませんが、現在の社会状況を意識した作りになっています。
太田さんの初演がバブル期-バブル崩壊直後の『更地』だとしたら、今回は不況の不安定な時代の『更地』ということを意識してきました。
そして夫婦は、初演の60代と違ってまだ働き盛りの40代。
過去の価値への誤りの認識と批評、そして新しいヴィジョンへの模索の間の「判断停止」の空白の時間。「なにもかもなくしてみる」ことの意味。失われた生の実感。
記憶の時間への「旅」に出る夫婦。
といっても作家・太田省吾も述べているように、生の実感や意味を見出そうとする夫婦のジタバタ(「どたばた」じゃありません)喜劇なのですが、男と女の身につまされるような関係もしっかり描かれ、またとても詩的でとても美しい作品でもあるのです。

初日は来週末の19日(金)、21(土)、21(日)のたった3日間3ステージの短い公演ですが、ご来場いただければ幸いです。

詳細は以下です。

太田省吾へのオマージュ
更地
http://kawasaki-ac.jp/theater-archive/090619/
6月19日(金) 19:30開演★
6月20日(土) 17:00開演
6月21日(日) 15:00開演★
★=アフタートークあり
19日(金)19:30 小山田徹(美術家)
21日(日)15:00 三浦基 (演出家)

川崎市アートセンター・アルテリオ小劇場
アクセス
http://kawasaki-ac.jp/access/index.html
小田急線「新百合ヶ丘駅」北口徒歩3分
小田急線新宿駅、本厚木駅より急行で27分
小田急線新宿駅より快速急行で23分

出演:下総源太朗、佐藤直子

作:太田省吾 
演出:阿部初美
美術:小山田徹
舞台監督:弘光哲也
照明:森規幸 (balance,inc.DESIGN)
音響:木下真紀
演出助手:田中智佳
宣伝美術:京
制作統括:大久保聖子
制作:河合千佳

チケット料金(日時指定・全席自由・税込)

『更地』
一般=前売 4,000円 当日 4,500円
学生=前売 2,500円 当日 3,000円

2公演セット券『更地』『あたしちゃん、行く先を言ってー太田省吾全テクストよりー行程2』(テクスト:太田省吾 演出:三浦基)
※専用ダイヤル、チケットカウンターでの前売のみ
一般=5,500円
学生=4,000円

お問合せ 川崎市アートセンター 
Tel.044-955-0107
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