さて二日目。みんなはどれくらい家で考えてきてくれただろうか。
昨日は帰りに校長先生が二人の男の子をつかまえて、「今どれくらい力出してやってる?」と聞いていた。男の子たちは「60パーセントくらい。。。」と答えた。「じゃあいつ100パーセントの力を出すの?」と聞くと、こどもたちは黙ってしまった。「今日と明日しかないんだよ、100パーセントの力を出さないうちに終わっちゃうよ!」。本当にすてきな校長先生である。
■当日の朝
スタッフとの作戦会議。お話を作るのが難しい1、テーマが難しい3、構成が難しい5、この3つのグループにわたしが入って一緒に作業することにして、ノムさん、古賀さんにはこの他の2と4のグループを中心にみてもらうことにする。
二日目は、創作の時間を一時間けずって3時間目創作、4時間目発表、5時間目感想意見交換と講評、6時間目演劇のゲーム、という予定だったけど、もし創作がうまくいかなかったり、もう一歩踏み込みたいのに時間が足りない場合は、あまり中途半端もよくないので、一日目と同じスケジュールにして、6時間目の演劇ゲームを中止することで合意してスタート。
■3、4時間目
昨日の校長先生の話をして、今日は100パーセントの力を出してくれとこどもたちに言う。
昨日、1「工場」グループのまとめ役に選ばれたTくんがなんと休んでしまった。プレッシャーからだろうか、明日はわたしも一緒に作るよ、とひと言言っておいたら来てくれただろうか。真相はわからないが、とにかく工場のいいところをリアルに語れるTくんがいないのは痛い。とにかくこのグループはまとめ役がいないので、まずここに入らなくてはならなかった。
グループのメンバーはまだ昨日の話にこだわっていた。ここは実はみんな活躍していいところを見せたいと思っている男の子たちが多く、自分自分になってしまい、それをまとめる人がいないのだ。だからみんなやる気はあるんだけど。まずは自分たちの街のことを具体的に現実的に考えてみようと提案する。紅一点のAちゃんの描写力がほしい。たのみの綱のAちゃんは、ものすごく恥ずかしがりで人形を使っても演技が嫌で仕方ないようだった。いやなら人形はしなくてもいい、劇作家的な役割をしてくれれば。すると「工場の煙で空気が汚くなって、空がへんな色になったってお母さんが言ってた」とAちゃん。そうそう、そういう話ほかにないかな?「川がきたなくなって魚がいっぱい死んだってじいちゃんが言ってた」と、Mくん。そうそうそういう話を入れようよ。でも工場のいいところはないのかな?工場があって助かってるのは誰?働く人。工場で作ったものを使う人。こどもたちはけっこうわかっている。それに工場は夢を作る。Tくんみたいに、工場で働きたいと憧れる子もいる。具体的に話せばどんどんこどもたちからでてくる。工場のことには我関せずで過ごしてきたHくんは、具体的な工場の話になると他の子みたいに知識がないので活躍できず、また我関せずとばかり一人で人形で遊び始めてしまった。時間がないこともあったが、Hくんにはあえて何も言わず、とにかくその調子で具体的に街のいいところ悪いところを表現して物語を作るように言って、話し合いが難航し、救いを求めている3「いじめ」グループに向かう。
3「いじめ」グループでは、昨日いじめられる役をやったパンダちゃんのHくんが、もういじめられる役は嫌だと主張。いじめられ役を決められずにいた。Hくんは手描きみたいなイラストのついたTシャツを着ていて、珍しいTシャツだね、と言ったら自分で描いたということだった。口数は少ないけど、独特な自分の世界を持った芸術家肌の子である。いくら遊びだっていじめられるのは嫌だよね、Hくんよくやった。いじめる役をやったみんな、演じてみてどうだった?いじめる人の気持ちわかった?「上靴を隠す時やっててはっとした。嫌だった。」みんな口々にいじめる役は嫌だったというが、じゃあいじめる役が嫌ならいじめられる役をやったらいいんじゃない?なぜみんないじめられる役は嫌なの?もう一度考えよう、なぜいじめるのかな?昨日、Fくんが「家庭で愛されていないストレスから友だちをいじめてしまうんじゃないか」って言ってたよね?「オレに言わせると大人が悪いよ!」憤ってMくんが言いきる。じゃ大人はなんでこどもをいじめるの?Kさんが続く。「家族の世話で自分の時間がないからイライラしてる」すごい、鋭い(焦)、、、「残業ばっかりだったり、会社の上の人にいじめられてる」すごい、こどもはやっぱりそうとう大人を見ている。じゃあ上の人はなんで会社員をいじめるの?昨日誰かが「お金・・・」とぽつりと言った。こういうふうにみていくと、こどものいじめの問題は大人の問題、社会全体の問題とも言えるよね。それにいじめる子といじめられる子、普通はいじめられる子を一方的にかわいそうと思うけど、本当にそうだろうか?それを考えながら、もう一度話を考えよう、と言ってやっぱり途方にくれている5「一人暮らし」グループに入る。
5「一人暮らし」グループ。一人一人ちゃんと具体的に考えてきたかな?それぞれがひとり暮らしを始めるところから始まるよ、最初の一週間、半年後、一年後、十年後をそれぞれ想像して台本を書いてみて、と指示。将来やりたいことは?の問いに「一人暮らし。ひとりぼっちになってしまった時のために慣れておきたいから」と書いたMさんは、人形劇の遊びだというのに、本当に不安そうな顔をしている。なにをするかな?「香水買ってきてリラックスする」どういう時さみしくなると思う?「一人でテレビ見たりご飯食べたりしてる時」寂しさをまぎらわす時、なにをする?「友だちと遊ぶ」「ペットを飼う」そんなふうに書いていけばいいよ、それに十年後はもう一人じゃなくて、家族ができてるかもしれないし。そういうと、Mさんはやっと気を取り直して鉛筆を持った。このグループの男の子たちはなんだかかわいらしくて、人形を大事にあつかったり、あんまり雄々しいタイプではなく、一人暮らしでなにする?と聞くとパソコンと答えたEくんに、ゲームでもするのかと思ってパソコンでなにするの?と聞くと「ご飯のレシピを探す」と答えたり、お料理したり、家事をしっかりやろうとする子たちだ。とくにテレたりすることもなく、彼女ができてデートしたり、なんて台本を書いていくので面白い。
それからまた1や3のグループの作業がちゃんと進んでいるか、このあたりをぐるぐる回るうちにあっという間に3、4時間目が終わり、6時間目の演劇ゲームのプログラムはカットになった。
■給食、掃除、昼休み
わたしたちスタッフは会議室でミーティング。まあ、3、4時間目はできることはやった。2「怖いものなし」グループがなかなか面白くなったという情報。
本当の勝負は二日目の今日だったから、気合いを入れてがんばったおかげか背中がばきばきになっていた。以前はこんなことはなかったのに、やっぱり育児と家事と仕事と、そして今回は引っ越しの準備がかさなって無理がたたったのか、4年ぶりの発作もたぶん過労とストレスだろうと思う。それでもこの仕事はどうしてもやりたかったし、実現できて本当によかった。それに引っ越せばまた状況は少しよくなるだろう。今回Kは実家の両親にあずけておいてきた。またいわきみたいに連れていって、エネルギーをそっちにとられて仕事がまっとうできなくてはやる意味がない。幸いKはじいとばあ、とくにじいが大好きで、実家に行けばわたしたち親がいるにもかかわらず、夜はよくじいと寝ている。わたしがいなくなって二日目の夜は「はっちゃん、ママー」と泣いたらしいが、泣いたのはその夜だけで、あとは元気に過ごしていたらしい。最終的には5泊、わたしと離れていた。両親に感謝である。
この昼休みに、劇場スタッフのインタビューの撮影があった。今回のワークショップの目標や意義などを話す。
ここまでなんとかきた。あとはこどもたちのがんばりを見せてもらう。
こどもたちは昼休み返上で人形劇の練習にいそしんでいた。
■5時間目
発表。
1「工場」のグループ。今日は最後までちゃんと発表できた。我関せずだったHくんもしっかり劇に参加している。作り声で演じているのがなんとも可笑しい。本人たちは多少恥ずかしがりながら、途中で放棄したい気持ちにもかられながら、でも負けずに、なんとか途切れずに演じ続けている。よくがんばった。昨日とはぜんぜん違う。ちゃんと工場の街のいいところ、悪いところ、両方入っていたし、具体的だった。ナレーションで片付けてしまう部分も減った。よくを言えばこの調子でもっと長く、構成を少し手伝いながら完成させられたら、とってもいいショート人形劇ができたんじゃないかと思う。
2「怖いものない」。昨日の話の続きができていた。門限破りでお母さんに叱られた主人公は家を出てとぼとぼと山へ歩く。途中、ともだちのカメと会うと、カメも門限破りで家を追われたということだった。そこへ津波がやってくる。カメもお母さんも、みんな死んでしまい、主人公だけが生き残る、という話ができていた。あいかわらずこのグループは、表現に関しては創意工夫がうまくて、チームワークもいい。作業中はみんな勝手なことしてるように見えるのに不思議だった。ごちゃごちゃしてなくて、ちゃんと「見せる」ことを意識してるし、面白い表現がうまいので、笑いがたくさん起きた。
しかし、本当に怖いこと=津波がくるというエピソードは入ったものの、それを本当に想像できただろうか。それすらも笑いになってしまっていたのだ。
3「いじめ」グループの物語は、二つのシーンからなる。「本当にかわいそうなのはどっち?」「本当に弱いのにつよがっていじめてしまう子」というタイトルがついていた。
初めに、親がこどもを虐待するシーンから始まる。これがなんだかとてもリアルだった。お母さん役で「オレに言わせれば大人が悪いよ!」と言ったMくんは、ちょっと俳優の素質のある子だった。ちょっとハスにかまえたとこがあって、感受性が豊か、表現に思い切りがあって面白く、自分の感情に正直、さらに思いやりもある、さめたとこもある、面白い子だった。
しかしもったいなかったのは、その後が続かず、ほとんどナレーションで「説明」してしまったのだった。二つ目のストーリーも一つ目との関連がなく、ただ状況を説明しただけになってしまったのが残念だったが、このグループも時間をかければしっかりした表現で作品を完成させることができると思うし、みんなが漠然と不安に思っていた「いじめ」問題に、自分事として真剣に取り組めたことがよかったと思う。
4「冒険旅行」グループ。ここにはほとんどかかわってあげられなかったことをちょっと後悔した。
一応北極みたいなところへ冒険旅行に出かけることになって、そこでなんだか熊に2回襲われて帰ってくるという話だったけど、なにを表現したかったのかよくわからず、熊に襲われることで未知の世界での困難さを表現していたのかな。もう少し深みのある話に導きたかった。でも手で洞窟を表現したりして、具体的な表現はとても工夫が見られてよかったんだけど。
5「一人暮らし」グループ。
「このグループ30分くらいあるんじゃね?」というヤジがとぶほど、ここはえらく長いストーリーになってしまった。一人暮らしの最初の一週間、半年後、一年後、十年後、こんなにいらなかったかな。これで5人分の人生をやって、最後の方は、たとえば一人一言「家族ができました」とかくらいで終わってよかったんだけど、どれもべったり長いストーリーにしてしまった子が多くて、かなり時間がかかった。見てるみんなは「長い長い」とヤジをとばしつつも、面白いので笑いながらけっこうあきずに見ていた。ほんとにおもしろかった。全員が全員、シーンの最後には「もう寝よ」と言って寝る。
「また寝ちゃったよー」と笑いが起きるけど、けっこうリアルで、なんか解決できない問題があるときは「とりあえず寝よ」みたいな知恵がこどもたちも中にもうかがえる。一人暮らしをとても不安がっていたMさんは結局ペットを飼って、十年後もひとりで暮らしていたが、だいぶ慣れたと言っていた。もう一人の女の子Iさんは、積極的でお兄ちゃんにも一人暮らしを進めたりしながらも十年後には結婚して家族を持って幸せに暮らしていた。男の子たちは、なんだかみんな料理がうまい。料理学校に通ったり、会社を作ったり、社会的な要素を入れながらも彼女ができたり分かれたり。具体的なデートの様子も面白かった。ちょっと長過ぎたものの、物語としてはここが一番面白かった。形をしっかり整える作業をすれば、作品としてもそうとう面白くなると思う。
6時間目の感想意見交換はまた次回に続く。
昨日は帰りに校長先生が二人の男の子をつかまえて、「今どれくらい力出してやってる?」と聞いていた。男の子たちは「60パーセントくらい。。。」と答えた。「じゃあいつ100パーセントの力を出すの?」と聞くと、こどもたちは黙ってしまった。「今日と明日しかないんだよ、100パーセントの力を出さないうちに終わっちゃうよ!」。本当にすてきな校長先生である。
■当日の朝
スタッフとの作戦会議。お話を作るのが難しい1、テーマが難しい3、構成が難しい5、この3つのグループにわたしが入って一緒に作業することにして、ノムさん、古賀さんにはこの他の2と4のグループを中心にみてもらうことにする。
二日目は、創作の時間を一時間けずって3時間目創作、4時間目発表、5時間目感想意見交換と講評、6時間目演劇のゲーム、という予定だったけど、もし創作がうまくいかなかったり、もう一歩踏み込みたいのに時間が足りない場合は、あまり中途半端もよくないので、一日目と同じスケジュールにして、6時間目の演劇ゲームを中止することで合意してスタート。
■3、4時間目
昨日の校長先生の話をして、今日は100パーセントの力を出してくれとこどもたちに言う。
昨日、1「工場」グループのまとめ役に選ばれたTくんがなんと休んでしまった。プレッシャーからだろうか、明日はわたしも一緒に作るよ、とひと言言っておいたら来てくれただろうか。真相はわからないが、とにかく工場のいいところをリアルに語れるTくんがいないのは痛い。とにかくこのグループはまとめ役がいないので、まずここに入らなくてはならなかった。
グループのメンバーはまだ昨日の話にこだわっていた。ここは実はみんな活躍していいところを見せたいと思っている男の子たちが多く、自分自分になってしまい、それをまとめる人がいないのだ。だからみんなやる気はあるんだけど。まずは自分たちの街のことを具体的に現実的に考えてみようと提案する。紅一点のAちゃんの描写力がほしい。たのみの綱のAちゃんは、ものすごく恥ずかしがりで人形を使っても演技が嫌で仕方ないようだった。いやなら人形はしなくてもいい、劇作家的な役割をしてくれれば。すると「工場の煙で空気が汚くなって、空がへんな色になったってお母さんが言ってた」とAちゃん。そうそう、そういう話ほかにないかな?「川がきたなくなって魚がいっぱい死んだってじいちゃんが言ってた」と、Mくん。そうそうそういう話を入れようよ。でも工場のいいところはないのかな?工場があって助かってるのは誰?働く人。工場で作ったものを使う人。こどもたちはけっこうわかっている。それに工場は夢を作る。Tくんみたいに、工場で働きたいと憧れる子もいる。具体的に話せばどんどんこどもたちからでてくる。工場のことには我関せずで過ごしてきたHくんは、具体的な工場の話になると他の子みたいに知識がないので活躍できず、また我関せずとばかり一人で人形で遊び始めてしまった。時間がないこともあったが、Hくんにはあえて何も言わず、とにかくその調子で具体的に街のいいところ悪いところを表現して物語を作るように言って、話し合いが難航し、救いを求めている3「いじめ」グループに向かう。
3「いじめ」グループでは、昨日いじめられる役をやったパンダちゃんのHくんが、もういじめられる役は嫌だと主張。いじめられ役を決められずにいた。Hくんは手描きみたいなイラストのついたTシャツを着ていて、珍しいTシャツだね、と言ったら自分で描いたということだった。口数は少ないけど、独特な自分の世界を持った芸術家肌の子である。いくら遊びだっていじめられるのは嫌だよね、Hくんよくやった。いじめる役をやったみんな、演じてみてどうだった?いじめる人の気持ちわかった?「上靴を隠す時やっててはっとした。嫌だった。」みんな口々にいじめる役は嫌だったというが、じゃあいじめる役が嫌ならいじめられる役をやったらいいんじゃない?なぜみんないじめられる役は嫌なの?もう一度考えよう、なぜいじめるのかな?昨日、Fくんが「家庭で愛されていないストレスから友だちをいじめてしまうんじゃないか」って言ってたよね?「オレに言わせると大人が悪いよ!」憤ってMくんが言いきる。じゃ大人はなんでこどもをいじめるの?Kさんが続く。「家族の世話で自分の時間がないからイライラしてる」すごい、鋭い(焦)、、、「残業ばっかりだったり、会社の上の人にいじめられてる」すごい、こどもはやっぱりそうとう大人を見ている。じゃあ上の人はなんで会社員をいじめるの?昨日誰かが「お金・・・」とぽつりと言った。こういうふうにみていくと、こどものいじめの問題は大人の問題、社会全体の問題とも言えるよね。それにいじめる子といじめられる子、普通はいじめられる子を一方的にかわいそうと思うけど、本当にそうだろうか?それを考えながら、もう一度話を考えよう、と言ってやっぱり途方にくれている5「一人暮らし」グループに入る。
5「一人暮らし」グループ。一人一人ちゃんと具体的に考えてきたかな?それぞれがひとり暮らしを始めるところから始まるよ、最初の一週間、半年後、一年後、十年後をそれぞれ想像して台本を書いてみて、と指示。将来やりたいことは?の問いに「一人暮らし。ひとりぼっちになってしまった時のために慣れておきたいから」と書いたMさんは、人形劇の遊びだというのに、本当に不安そうな顔をしている。なにをするかな?「香水買ってきてリラックスする」どういう時さみしくなると思う?「一人でテレビ見たりご飯食べたりしてる時」寂しさをまぎらわす時、なにをする?「友だちと遊ぶ」「ペットを飼う」そんなふうに書いていけばいいよ、それに十年後はもう一人じゃなくて、家族ができてるかもしれないし。そういうと、Mさんはやっと気を取り直して鉛筆を持った。このグループの男の子たちはなんだかかわいらしくて、人形を大事にあつかったり、あんまり雄々しいタイプではなく、一人暮らしでなにする?と聞くとパソコンと答えたEくんに、ゲームでもするのかと思ってパソコンでなにするの?と聞くと「ご飯のレシピを探す」と答えたり、お料理したり、家事をしっかりやろうとする子たちだ。とくにテレたりすることもなく、彼女ができてデートしたり、なんて台本を書いていくので面白い。
それからまた1や3のグループの作業がちゃんと進んでいるか、このあたりをぐるぐる回るうちにあっという間に3、4時間目が終わり、6時間目の演劇ゲームのプログラムはカットになった。
■給食、掃除、昼休み
わたしたちスタッフは会議室でミーティング。まあ、3、4時間目はできることはやった。2「怖いものなし」グループがなかなか面白くなったという情報。
本当の勝負は二日目の今日だったから、気合いを入れてがんばったおかげか背中がばきばきになっていた。以前はこんなことはなかったのに、やっぱり育児と家事と仕事と、そして今回は引っ越しの準備がかさなって無理がたたったのか、4年ぶりの発作もたぶん過労とストレスだろうと思う。それでもこの仕事はどうしてもやりたかったし、実現できて本当によかった。それに引っ越せばまた状況は少しよくなるだろう。今回Kは実家の両親にあずけておいてきた。またいわきみたいに連れていって、エネルギーをそっちにとられて仕事がまっとうできなくてはやる意味がない。幸いKはじいとばあ、とくにじいが大好きで、実家に行けばわたしたち親がいるにもかかわらず、夜はよくじいと寝ている。わたしがいなくなって二日目の夜は「はっちゃん、ママー」と泣いたらしいが、泣いたのはその夜だけで、あとは元気に過ごしていたらしい。最終的には5泊、わたしと離れていた。両親に感謝である。
この昼休みに、劇場スタッフのインタビューの撮影があった。今回のワークショップの目標や意義などを話す。
ここまでなんとかきた。あとはこどもたちのがんばりを見せてもらう。
こどもたちは昼休み返上で人形劇の練習にいそしんでいた。
■5時間目
発表。
1「工場」のグループ。今日は最後までちゃんと発表できた。我関せずだったHくんもしっかり劇に参加している。作り声で演じているのがなんとも可笑しい。本人たちは多少恥ずかしがりながら、途中で放棄したい気持ちにもかられながら、でも負けずに、なんとか途切れずに演じ続けている。よくがんばった。昨日とはぜんぜん違う。ちゃんと工場の街のいいところ、悪いところ、両方入っていたし、具体的だった。ナレーションで片付けてしまう部分も減った。よくを言えばこの調子でもっと長く、構成を少し手伝いながら完成させられたら、とってもいいショート人形劇ができたんじゃないかと思う。
2「怖いものない」。昨日の話の続きができていた。門限破りでお母さんに叱られた主人公は家を出てとぼとぼと山へ歩く。途中、ともだちのカメと会うと、カメも門限破りで家を追われたということだった。そこへ津波がやってくる。カメもお母さんも、みんな死んでしまい、主人公だけが生き残る、という話ができていた。あいかわらずこのグループは、表現に関しては創意工夫がうまくて、チームワークもいい。作業中はみんな勝手なことしてるように見えるのに不思議だった。ごちゃごちゃしてなくて、ちゃんと「見せる」ことを意識してるし、面白い表現がうまいので、笑いがたくさん起きた。
しかし、本当に怖いこと=津波がくるというエピソードは入ったものの、それを本当に想像できただろうか。それすらも笑いになってしまっていたのだ。
3「いじめ」グループの物語は、二つのシーンからなる。「本当にかわいそうなのはどっち?」「本当に弱いのにつよがっていじめてしまう子」というタイトルがついていた。
初めに、親がこどもを虐待するシーンから始まる。これがなんだかとてもリアルだった。お母さん役で「オレに言わせれば大人が悪いよ!」と言ったMくんは、ちょっと俳優の素質のある子だった。ちょっとハスにかまえたとこがあって、感受性が豊か、表現に思い切りがあって面白く、自分の感情に正直、さらに思いやりもある、さめたとこもある、面白い子だった。
しかしもったいなかったのは、その後が続かず、ほとんどナレーションで「説明」してしまったのだった。二つ目のストーリーも一つ目との関連がなく、ただ状況を説明しただけになってしまったのが残念だったが、このグループも時間をかければしっかりした表現で作品を完成させることができると思うし、みんなが漠然と不安に思っていた「いじめ」問題に、自分事として真剣に取り組めたことがよかったと思う。
4「冒険旅行」グループ。ここにはほとんどかかわってあげられなかったことをちょっと後悔した。
一応北極みたいなところへ冒険旅行に出かけることになって、そこでなんだか熊に2回襲われて帰ってくるという話だったけど、なにを表現したかったのかよくわからず、熊に襲われることで未知の世界での困難さを表現していたのかな。もう少し深みのある話に導きたかった。でも手で洞窟を表現したりして、具体的な表現はとても工夫が見られてよかったんだけど。
5「一人暮らし」グループ。
「このグループ30分くらいあるんじゃね?」というヤジがとぶほど、ここはえらく長いストーリーになってしまった。一人暮らしの最初の一週間、半年後、一年後、十年後、こんなにいらなかったかな。これで5人分の人生をやって、最後の方は、たとえば一人一言「家族ができました」とかくらいで終わってよかったんだけど、どれもべったり長いストーリーにしてしまった子が多くて、かなり時間がかかった。見てるみんなは「長い長い」とヤジをとばしつつも、面白いので笑いながらけっこうあきずに見ていた。ほんとにおもしろかった。全員が全員、シーンの最後には「もう寝よ」と言って寝る。
「また寝ちゃったよー」と笑いが起きるけど、けっこうリアルで、なんか解決できない問題があるときは「とりあえず寝よ」みたいな知恵がこどもたちも中にもうかがえる。一人暮らしをとても不安がっていたMさんは結局ペットを飼って、十年後もひとりで暮らしていたが、だいぶ慣れたと言っていた。もう一人の女の子Iさんは、積極的でお兄ちゃんにも一人暮らしを進めたりしながらも十年後には結婚して家族を持って幸せに暮らしていた。男の子たちは、なんだかみんな料理がうまい。料理学校に通ったり、会社を作ったり、社会的な要素を入れながらも彼女ができたり分かれたり。具体的なデートの様子も面白かった。ちょっと長過ぎたものの、物語としてはここが一番面白かった。形をしっかり整える作業をすれば、作品としてもそうとう面白くなると思う。
6時間目の感想意見交換はまた次回に続く。