昨日、「産み育てを考えるワークショップ・北九州〜世田谷〜水戸をめぐる文通プロジェクト」のプレ・ワークショップが水戸で始まりました。

メンバーの半分くらいが、昨年度のワークショップ参加者でリピーターのみなさんでしたが、みんな少しずつだけど変化がみられました。いちばんの変化はみんなどこか体のよけいな力が抜けていたこと。
水戸は知らない人と打ちとけるのにとても時間のかかるお土地柄、知らない人に対する警戒心はとても強いけど、いったん打ちとければればとても優しく人なつこい、というところはその北の福島、いわきあたりの人々とも共通しているかもしれません。
そんな理由から、他の地域より参加者どうしの関係作りに時間がかかったけれど、昨日再会したみんなの顔はなんとなく嬉しそうで、もちろんみんな今も自分の子育てに必死な日々を送っているけど、この場所に少しの希望や喜びを感じて来てくれたんだなあと思うと、わたしも本当に嬉しかったです。

そのほか、地元で里山を守るNPOを立ち上げて活動中のAちゃん、ライオンズクラブのみなさん、水戸市役所子ども課のYさん、会場の多世代交流館わんぱーく・みとの館長Kさんなどなど、子育てまっただ中から少し距離のあるところから一緒に「産み育て」を考えてくださる独身やイクバアのみなさんにご参加いただけたのもとてもよかったです。

プレ・ワークショップ第一回目の昨日は、前回のワークショップの振り返りつつ、「こんな感じのワークショップです」とご紹介のプログラムとして、水戸でよくやっていたシアター・ゲームを体験していただいた。
どれも2人組でやるゲームばかりで、相手と言葉に頼らない対話や信頼関係なしではできないゲームばかりで、イクバアのみなさんはふだん使わない神経と体をフル回転させなければならず、かなりお疲れになったご様子(ゴメンナサイ〜)でしたが、2回目のみなさんは、1回目の体験をふまえてちょっとした変化があった。
片方が目をつむって自由に遊び、もう片方が「危ない」と思ったときだけ止める、というゲームで、「前回やってみて自分の過保護さに初めて気づいた」というSさんは、帰って旦那にも聞いてみたら「そうだよ」と言われ、それから少しくらい子どもがむちゃをしてもすぐにやめさせるのを控えるようになったということ。
そうなんですね、多くのシアター・ゲームは、このように自分の知らない一面に出会ったり気づいたりすることができるようになっているんですね。もちろん、自分だけではなくほかの人や世界のことにも気づきをもたらします。
イクバアのAさんは「あの窓がこんな大きいなんて思わなかった、この階段がこんな高いなんて思わなかった」とおっしゃっていましたが、こんなふうに「世界」と体でダイレクトに対話をしていたんですね。
物書きのAさんは自分がついつい過保護になってしまう理由として、ケガをさせて一生をだめにしてしまったらどうしよう、などと想像してしまう、「年をとると想像力がたくましくなる」のだとおっしゃっていましたが、この言葉にはなかなか説得力があります。たしかに「想像力」とはさまざまな経験によってはぐくまれていくものなのかもしれませんね。
館長のKさんもこの日はお休みをとって、「館長」という荷物をおろして、軽くなった体でゲームをほんとうに楽しんでくださっているのがよくわかりましたが、ちょっと危ないところへでも好奇心をもって面白がって遊んでいく、こんな冒険好きな方だからこういう館の館長をつとめることができるのかもしれないなあと思う。
Kさんには名言があって、それは「大切という字は大きく切ると書くのよ」という話なのだが、これを担当のFさんから又聞きしていたく感銘を受けたわたしも、それ以来いろんな人にこの話を伝えていて、これを聞くと、どの顔もみんなはっとした顔になるのだが、「産み育て」のワークショップをやっていると、こんな説得力のある名言によく出会うのは不思議だ。
劇の中ではもう名台詞はとっくに死んでいるというのに。
「産み育て」が、こんな便利で情報に溢れた現代にあっても、どこか原初的でとてもシンプルな生命の瀬戸際の営みだからだろうか。

シアターゲームのあとは恒例のお話会をやって、この日も2時間の枠をオーバーしてしまったけど、なんとか全員最後まで「子育て」に関するおひとりおひとりの関心事を一言ずつお聞きすることができた。
イクバアのKさんは、「子どもを三人産んだけれど、どの子もみんな違っていて、それぞれの子からいろんなことを学んだ。学ばせてくれることはひとりひとりみんな違う。だから経済的な心配などせず、たくさん子どもを産んでほしい、そのお手伝いができたらいいなあと思ってここに来ました」とおっしゃっていた。こんな名言にも初めて出会った。
そしてその説得力が半端ない。「子育て」ってほんとすごいんだなー。
今、子育てに迷い悩み苦しむまっただ中の女性たちも、もちろん男性たちも、きっと、その迷い悩み苦しみに育てられ、いつのまにか人としてたくましく成長していくんだろうなあ。その涙はきっと報われる日が来るんだとなんだか希望をもってみんなの顔を見ることができるのは、ほんとこんな先輩たちの説得力のある名言集のおかげである。
そして今朝も、子どもを保育園に送る道すがら、激しい雷雨の中「おうちにかえる〜」と泣き叫んで抵抗するKに翻弄されること30分、全身ずぶ濡れになりつつ「わたしもこうして育てられるのよ〜」と自分を励まし、なんとか説得して園まで送り届けてきた。着いてしまえばけろっとしちゃうんだからまーなんと人騒がせな、、、です。

さて来週は、13日(金)が世田谷パブリックシアターの第1回プレ・ワークショップです。
世田谷は昨年度と場所が変更になります。世田谷はどんなメンバーでのスタートになるやら楽しみですねー。
水戸の2回目のプレは今月27日(金)です。次回はたぶん一回目のお話をもとにテーマを決めて人形劇をやる予定です。