文通プロジェクトの振返りもできず、仙台の報告もできず、どんどん時間がたってしまいます。子育てまっただ中の生活はホントにスローですね。。しかし、こんな時間ももしかして後から振返ったらほんの短い時間なのかもしれないから、いろんなことできなくて焦っても、やっぱり今をできるだけ楽しんだほうがいいよなーと、日に日に大きくなって、4歳を前にした子どもを見て感じ始めています。
今月は、所属している劇団(正確には「劇団」ではなく「集団」ですが)の研究生、1年生、2年生の卒業公演に通い、卒業式と選考会に参加していました。前期授業を担当していた頃からすれば、みんななんとなく舞台に立って演技をすることに慣れてきて、みんなそれなりに成長したんだなあと感じました。
劇団に残っても残らなくても結局は同じ。ここを出て、しばらくはみんな路頭に迷いつつ、俳優を続けていく人はいくし、やめる人はやめる。それぞれの人生ですね。
今、俳優は「職業」にはならない仕事です。でもここで触れた演劇が、みんなのこれからの人生を少しでも豊かなものにしてくれるといいなあと思います。
卒業おめでとう。これからが本当のスタートですね。
さて、東京都の新聞、都政新報に文通プロジェクトの振返りの記事を書いて、2月4日に掲載されました。
東京の新聞なので、世田谷がメインです。こうしてメディアに取り上げてもらうことで、少しでも産み育ての現状を知ってもらえるとありがたいですね。お声がけくださった都政新報さんに感謝です。
新聞、写真だと読みづらいので、ここに記事を掲載します。
子育て事情を演劇で表現
「東京はキャリアアップはしやすいけど、子供を持つのは難しい」。北九州から上京し、東京で働き、子供が出来て仕事を辞め、故郷での子育てを選んだ女性が言った。
昨年秋、世田谷パブリックシアター、北九州芸術劇場、水戸芸術館の3館による「産み育てを考えるワークショップ~北九州・世田谷・水戸をめぐる文通プロジェクト」が2カ月にわたって開催され、私はその進行役を務めさせていただいた。冒頭の言葉はその参加者の発言である。
このプロジェクトは、子供を「産み育てる」ことにまつわる様々な問題、例えば、働く女性のキャリアの中断、仕事への復帰や家事育児との両立、男性の育児参加の難しさ、世代間のギャップ、母子の孤立、経済的な不安、子供のしつけ、ママ友同士の付き合い等を、演劇的な手法で表現し、ビデオレターとしてその思いや考えを交換するというものである。
一昨年、世田谷パブリックシアター単館の企画「子育てを考えるワークショップ」として始まり、全国各地で開催、昨年は3カ所での合同企画となった。
3地域ではテーマを決め、参加者の体験を基に、テーマをよく表す日常のシーンで簡単な人形劇を作り、それを撮影し、ビデオレターとして他の2地域に配信、相互に作品への感想をビデオレターで返信する、という流れだ。
人数15人程度、対象は年齢性別不問、子連れOKで募集したところ、今回は平日午前中の開催だったこともあり、どの地域も、子育てのため現在離職中や育休中、あるいは働きながら子育てをする乳幼児を連れた30代の女性たちが主な参加者となり、世田谷ではそこに、子育てが一段落し、現在子育てに悩むママたちのサポートをしたいという40代と50代の先輩ママ、未婚の20代が加わった。
世田谷のワークショップ初日は、「子育て観の違う祖父母世代やママ友とはどうつきあったらいいのか」「どうしたらまた働けるか」「子育てのためのフレキシブルな勤務は可能か」「女性が産み育てをする上で、社会インフラは遅れている」といった子育て当事者の意見や、「密室育児で一日中誰とも口を聞いていない、外出先で子供がぐずった場合に悩むママへの物理的・精神的フォローの仕方は?」など先輩ママから意見が挙がり、活発な話し合いが展開された。
世田谷のテーマは『働く』『孤育て』『子育て観の違い』。このうち『働く』は、各地共通のテーマとなったが、その具体的な内容には多少の差があり、世田谷の『働く』では、特に共働きの夫婦が子供を持つことの難しさが表現された。
作品中、働く妻が会社の上司や同僚に妊娠を報告し、周囲に迷惑がられ、「すみません、すみません」と頭を下げるシーンが演じられたが、このシーンを見た他地域の参加者からは「お腹の子供はどんな気持ちで聞いているだろう」「(女性の妊娠をただ迷惑がり、問題を根本から改善しようとしない)東京の人は向上心がないのでは?」などの感想が寄せられた。
『孤育て』は、以前、NHKの報道番組のキーワードにもなった、現代の「孤独な子育て」を表す言葉である。劇では、実家が遠いため親の助けを借りられず、仕事で疲弊する夫の協力も得られず、地域に知り合いもなく、子育てに孤軍奮闘する母親が、力なく「本当に独りなんだ…」とつぶやく。『働く』同様、東京の子育ての厳しさを表現するものとなった。
最後の『子育て観の違い』では、出産の方法(自然、無痛など)や子育て(食べ物、遊び、しつけ、教育など)に関し、様々な選択が可能になったからこそ、逆に他者の意見に振り回されたり、何を選択すべきか悩みがちな親の心情が表現された。
冒頭の言葉は、東京での「産み育て」の現実をよく表しているものと思われるが、参加者からは、ワークショップへの参加で前向きになれたなどの声も聞かれた。そして何より「こんな社会(東京)を私たちは変えていきたい」と胸を張った世田谷の女性たちの姿は、とても強く印象に残った。