栄養素の計算で頭がいっぱいの日々から、ほどなく解放される日が思わぬ形でやってきた。
10歳くんが学校に行けるようになって2~3ヶ月ほどたったある日、虫の知らせのようにふと思い立ってランドセルの中をあけてみたら、月間のコミック雑誌1冊分ほどの厚さの、ぼろぼろの紙の束が入っていた。とり出して見てみると、9月からのお手紙やひどい点数のテスト、授業で使ったと思われる資料、などなどだった。やっと学校に行けるようになったのだから、怒ってはいけない。。。自分に言い聞かせた。
翌日の夕方、担任の先生から電話があった。一昨年の秋から約一年、ほぼ学校に行けていなかったため、とくに算数がついていけなくなっているようだ、テストの最中も爪に絵を描いて遊んでいて集中していない、宿題もずっと免除していたが、これ以上放置すると授業についていけなくなるので、家で今までの復習をしてほしい云々。わたしはランドセルを開けたら、9月からの紙束が入っていて驚いたと告げると先生は、わたしが入れたんです、と言った。机の中を見てみたら大変なことになっていたんで、、、。
とにかく分数がわからなければ生きていくのは大変だ。公約数や公倍数もほとんどわからないらしい。文章問題が苦手と聞き、問題集を買いあたえ、計算ドリルと合わせて毎日やるように話をした。親が家でおしえるしかない。嘘でしょー💦。
月一回の定期受診の日、都内のクリニックの先生にこれを話して、もしかしたら発達障害かもしれないと言ってみた。腹痛頭痛で数ヶ月休むということが始まった3年生の時、忘れ物なくし物が多くて、担任の先生からも検査してみてくださいと言われたこと、でも検査が半年待ちで、その間になんとなく落ち着いてきたようにみえたこともあって検査しなかったこと、興味が次から次へとうつって散らかしっぱなしで片付けをしないこと、使ったらもどす、が1年生の時から言い続けて5年生になった今もほとんどできるようになっていないことなどを説明して、どうしたらいいですかね?と聞いてみた。
先生はちょっとの間黙って、たぶん脳が興奮状態にあって、なにかの栄養が足りていなくて、Lグルタミンが多すぎてうまくGABAに変換できずにいるので、栄養素を足したり、GABAのオイルをのませたりするか、または重金属デトックス、と言った。お母さんに虫歯があって、アマルガムや水銀などが使われていると、それが胎児の時に赤ちゃんにいってしまっている可能性もあるという。あるかも!と言うと、どれどれと先生は小さなペンライトでわたしの口の中を照らしのぞきこむと、この辺はあやしいですね、アマルガム水銀除去の歯科は紹介できますよ、ただし保険が効かないので高いけど、と言った。のちにかかりつけの歯医者で聞くと、やはりそれは使われていて、金属なんていろいろあるんだから、と歯科医の先生はちょっと不機嫌になったたけど、保険が適用になったからと、1本はグラスファイバー素材にかえてくれた。
とりあえず、ドイツ製で安全性の高い子ども用のマルチビタミン&ミネラルとGABAオイルが処方された。こちらも保険が効かないので高い💧。のませてみたら、少し片付けができるようになってきた。計算ドリルと問題集もがんばって続けられている。算数はそうとう疲れるようで、ひとしきりやるとかなり疲れた顔になっているが、とりあえずよい方向に向かってきたかも。
そしてマルチビタミンとミネラルで必要な栄養素がある程度摂れるようになったので、わたしは食事ですべての栄養をまかなうことを考えなければならない日々から解放されていった。
翌月の定期受診、クリニックの先生に報告すると、じゃあマルチビタミン&ミネラルの量を増やしてみて、それにプラスしてオメガ3系のサプリ。
なんかどんどん増えるなあ💦。。。
かさむ治療費に焦りつつも、今が正念場、と気持ちをおさえ、とりあえず先生の言われた通りにしてみた。
するとすぐに驚くべき変化が起こった。
「やっとみんなと同じように過ごせるようになったよ〜!」
「やっとみんなと同じように過ごせるようになったよ〜!」
学校からの帰り道に突然、10歳くんが大きな声で言い放った。
なに???と聞くと、これまではみんなのテンションが高すぎて、暴言をはいたり、それがうるさくてうるさくてとてもストレスだった、でも今日はそのうるささが気にならずにみんなと同じように過ごせた、学校にいる時間が長くて長くて本当にストレスだった、という。これには驚いた。
そういうことだったのか。
ストレス性の頭痛が起こっても、なにがストレスなのかわからない、と言っていた10歳くんも、感じていたことをやっと意識化して言葉にできたんだろう。
これが栄養の力か、、、と驚いた。
クラスに問題児がいて、その子が嫌だということだったが、それだけでこんな頭痛が起きているはずがないと思い、なにが原因なのか考え続けていた。
今までおくれた分の算数、宿題もがんばって、算数をやってもそんなに疲れた顔をしなくなった。さらに連絡帳も毎日書いてくるようになり、テストや手紙も持ってかえってくるようになった。
「水筒、宿題、手紙テスト、連絡帳、体温表」の頭の文字をとって「す、し、て、れ、た」を毎日学校で唱え、帰ったら必ず出すこと、というルールも決めた。
もともとは勉強がきらいなわけでもなく、あたらしいことを習うとよくご飯時におしえてくれた。テストの点数も平均点くらいにはもどってきたと思う。さらに、毎日言っても言ってもできなかったことが少しは言われなくてもできるようになってきた。とりあえず、お風呂のあとに使ったバスタオルは洗面所に干され、使ったドライヤーの待機電源は切られるようになった。5年間毎日言い続けてできなかったことだ。
宿題なんてほとんどやらなかったことを考えるとすごい進歩だと思う。
宿題には、わたしは最初から疑問をもっていて、1日学校で勉強してきてるのになんで帰宅してまでやらせるんだろうくらい思っていた。でも、10歳くんが学校に復帰して、分数をおしえはじめてわかったことがあった。おしえた時にわかっても、くりかえしやらないとその知識は定着しない、ということだった。おしえてわかったはずのことが次の日にはまたわからなくなっている。宿題とは、その知識を脳に定着させるためにあるんだとはっきりわかった。
せっかくおしえたことを次の日に忘れられてはこっちもうんざりである。。
とくにいい成績をとって、いい学校にいって、いいところに就職してほしい、とかは思っていないし、勉強はしたくなった時がタイミング、とも自分をふりかえって思う。
だけど、いつか自分のやりたいことに手が届くくらいの学力はつけておいてほしい、と切に思う。結局はなにごとも日々のこつこつしかない。
「いい変化がありました。」
翌月都内のクリニックの先生にご報告した。先生は興味深そうにわたしの報告を聞き、
「耳が敏感でまわりがうるさく感じるのかもしれませんね」と言った。
「実はわたしもそうだったんですよ」とわたしは自分の話をした。
17歳くらいから、疲れるとまわりの音が耳の中でわんわん大音量になって響き、耳が痛くてたまらなくなるという症状が時々でるようになった。ところが、去年の夏、10歳くんと一緒に腸内真菌、つまりお腹の中のカビをとる食事プログラム3週間にチャレンジしたら、3週間目にその症状があらわれて、カビが死ぬ時の好転反応で一時的に症状があらわれるダイオフだったのかもしれない、それ以来一度もその症状がでたことがない。
「そのプログラムはどこかに書いてあったんですか?」と先生。
「あの、北九州のクリニックの先生が書いた本でした。」
ああ、と先生はその著者の名前を言い当てた。
やっぱり同業者どうし知ってるのかな。一般的な西洋医学に比べたらまだまだ本当にせまい世界だろうし。オーソモレキュラー系、とでもいうのだろうか。
「10歳くんは発達障害ではありませんね」と先生が言った。
「え!?ちがうんですか?」
「栄養不足ですね。」
「はあ。栄養不足。。。」
そうだったのか。。。食べ物の好き嫌いはほとんどないが、小さい頃から食がほそくて、ほんとうに食べる量が少ないので、栄養不足はあり得る話ではあるが、ちょっと拍子抜けした。
「ちなみに重金属デトックス、というのはどんな感じなんですか?」
「少し前までは出来なかったんですが、今はできるようになったんですよ。GABAみたいなオイルを3ヶ月のませるんです。でも重金属の検査が10万円、治療用オイルが一月10万円で3ヶ月、トータル40万円です。」
「そうですか、うちは栄養剤を続けてみます。。」
10歳くんのことで、オーソモレキュラー医学、なるものを知った。薬に頼らず、足りない栄養を足したりすることで根治をめざす医学、といったところだろうか。この手の本を数冊読んだ。
いろいろなことがわかってきた。
慢性疾患は栄養や腸を整えることでだいぶ改善できる、ということだ。耳の症状は腸のカビとりで出なくなったが、27歳くらいから片頭痛発作に悩まされている。閃輝暗点とよばれる、視界が銀色に光って見えなくなったり、アメーバのようなものが見えたりする症状がでて、その後ひどい頭痛がでて、薬がなければ3日間くらい起きられないこともあり、最初の頃はよく救急車のお世話になった。そのうちいい薬ができて発作は3時間でおさまるようになった。ホルモンの関係なので更年期には出なくなると聞いていたが、ここのところむしろ回数がふえたようにも感じていた。生理とも関係していて、更年期で生理が不定期になり、月に2回もくるようになった影響もあるかも。しかし片頭痛もオーソモレキュラー系の本で、ビタミンB2とマグネシウム不足、それに運動不足が原因とわかり、本の指示通りにビタミンB2とマグネシウムをのみはじめてみたら、なんとそれっきり片頭痛発作はでなくなってしまったのだった。
なぜ27歳というタイミングで急に片頭痛発作が起こり始めたのか、後に気づいたのは、そのちょっと前に、一人暮らしを始めた影響で、パン、パスタ、うどん、食生活が完全に小麦中心に変化したことだった。小麦は腸を傷つけ、腸内環境を悪くする。あの、耳の症状が出始める少し前からは、よく外食でパスタを食べるようになっていたことにも気がついた。小麦はカビの餌でもある。
それから日本人に足りないと言われる3大栄養素、マグネシウム、亜鉛、ビタミンDも摂り始めてみたら、生理前生理中のひどい更年期の症状がだいぶおさまってしまった。割れやすかった爪も割れなくなって本当に驚いた。
夫もひどい花粉症なので、水素をのませてみたけれど、月2500円の安いものでは効かなかった。クリニックのドクターズの水素は月6000円でよく効くらしい。残念。今は自己免疫疾患をおさえる酪酸菌に餌をやる方法に切り替えた。
とにかく日本の土壌は火山灰地でマグネシウムが土、野菜や水からあまりとれないので、この地に暮らす人はマグネシウムが不足するらしい。マグネシウム不足はうつ、不眠、片頭痛、足の吊り、高血圧などさまざまな症状を引き起こすという。しかしマグネシウムは単体でとるのはよくなく、ブラザーイオンとよばれるカルシウムと一緒に摂る必要がある。とか、またわたしの頭の中は栄養素のことでいっぱいになっている。
10歳くんは、頭の方の問題は快方にむかっているけれど、やっぱり体力問題が残る。
子どもの副腎疲労に関する本にも出会った。
10歳くんの症状はまさにこれだった、と思う。
腸や体内のどこかに炎症があると、それを抑えようとして、副腎からコルチゾールなるものが分泌され、炎症が続くと副腎が働き続けて疲弊してしまい、とにかく体力がなく、いつも疲れている子どもになってしまうという。
すぐに疲れてしまうから宿題ができなかった。10歳くんは1日学校にいってくるだけで本当にいつも疲れていた。宿題なんかやる体力も気力も残っていない。お風呂に入ってご飯を食べるとやっと少し回復したけど。運動しなさいと運動をすすめたけど嫌がった。運動しないから体力ないんだよ、と責めたりもした。でも、運動すらできないほどに疲れている。なんかおかしい、と思っていた。そのうち学校にも行けなくなり、家にずっといることでますます体力がなくなっていったと思う。太陽の光すら浴びず、外の空気を吸ってお日様にあたってこいと言っても本当に嫌がっていた。まさに、検査の結果通り、ビタミンB6とタンパク質が不足したうつ状態だった。
あの10歳くんの疲労が副腎疲労からきていたものなら、腸の炎症がおさえられれば、副腎も回復するということになる。遅延型アレルギーの除去食をはじめてまもなく半年。腸の状態は少しはよくなっただろうか。
まだあやしい。一度薬でだめにしてしまった腸をふたたび強くするのはやはりそんなに簡単にはいかないだろうことは想像がつく。食べ物での治療には時間がかかる。
春一番が吹いた2月から、10歳くんはまた時々、頭痛や腹痛や疲れをうったえはじめ、習い事や学校を時々休むようになった。ひさしぶりに鍼灸に連れていくと、「南風の影響ですね」と先生が言ったのでびっくりした。
梅雨なんかが体調に影響するのは知られてるんですが、春一番とか南からの風も影響することはあまり知られてないんですよ、とのこと。
そういえば、10歳くんが体調を崩し始めた時期とぴったり重なっていた。
クリニックからは、遅延型アレルギーでできた特定の食べ物に対する抗体は約半年で変化し、そのあとは少しずつまた摂取して様子をみる、という行程が示されている。
まもなく半年。
またカレーや海苔、みかん、ナッツなんかが食べられるようになるかな。残念ながらもう小麦と牛乳はこのまま疎遠になるだろう。でも最近は牛乳の代わりに飲ませたオーツミルクを好きになりはじめている。時々は玄米パンも食べて文句はない。
わたし自身も思わず健康になってありがたい。
やっと半年。あと半年で一年。
こつこつやるしかありませんね。
もうすぐ春休み。