(パンフレット原稿より)

チルチルミチルが青い鳥を探していろんな世界を旅する『青い鳥』は、ここ日本では、多くの人がなんとなく内容を知っているお話だと思います。
わたしもその一人だったのですが、自分の子育てを通してこの『青い鳥』というお話と再会することになりました。

わたしにとって子育ては、妊娠の時の体調不良から、出産後の睡眠不足に苛まれながらの重労働、自分のやりたいことを犠牲にしなければならない日々、社会からの孤立など、本当に試練と忍耐の連続で、よく耳にしていた「育児放棄」や「虐待」は、けして遠い世界のことではないことを、身をもって知る機会となりました。それは子育ての実情をまったく知らなかったわたしにとって、本当にショッキングなことでした。
そしてその体験は、親になった多くの人たちのきつさを、自分が学び実践してきた演劇の知恵や手法で軽減することはできないかという思いに変わり、世田谷パブリックシアター主催の「子育てを考えるワークショップ」のファシリテーターを務めさせていただいたことでその思いを実現することができました。その後このワークショップは全国へと広がり、その土地土地のみなさんと「産み育て」について、いろいろな思いを共有したり、様々な問題を演劇の手法を使って考えてきたのですが、多く地域で感じたのは、やはり今の子育て環境の厳しさでした。
この過程で、一冊の本との出会いがありました。産婦人科医の池川明さんによる、生前記憶を持つ子どもたちの証言をまとめたものでした。そしてその子どもたちの証言の多くが『青い鳥』に登場する「未来の国」にそっくりだと書かれていたのです。それがこの『青い鳥』との再会のきっかけです。
小学生に上がったばかりの子どもと『青い鳥』を手にとり、一緒に読んでみると、そこには本当に驚くような世界がありました。「未来の国」とは、これから生まれてくる子どもたちがみんな地球に降りていくことを楽しみに準備をしている国でした。
生まれてきた子どもたちも、今は大人になったわたしたちも、みんなこんなふうに地球に生まれる日を楽しみにお空で待っていたのでしょうか。みんななにをもって、なにをしに生まれてきたのでしょう。 
そんな空想に浸りながら読む『青い鳥』は日々の子育てのきつさを忘れさせ、子どもが生まれてきてくれたことや、この世界に生きることの喜びを思い出させてくれるような物語でした。
もちろんメーテルリンクは美しい夢だけをわたしたちに見せてくれるわけではなく、この世界の残酷さや理不尽さも同時に描き出しています。しかしそれさえも越えた、この地球上に生まれ、生きることの不可思議さや切なさ、そして喜びを感じさせてくれるファンタジーをわたしたちに届けてくれています。
こんなすてきなファンタジーに出会えたことは、本当に幸せなことでした。そしてこのメーテルリンクからのプレゼントを劇場で多くの子どもたちや、かつて子どもだった大人、そして子育てでたくさんの思いを抱えた大人のみなさんと共有できたらと思いました。それが今回実現できたことに、心から感謝しています。

最後に。この『青い鳥』はとても謎めいたお話でもあります。メーテルリンクはそのこたえを探しだす楽しみも、わたしたちにたくさん残してくれました。さて、みなさんは仕掛けられた謎々にどんなこたえを見つけるでしょう?たぶん、こたえは一つではないはず。みなさんのこたえを、ぜひお聞かせくださいね。


開演15分前から、客席にて、今回舞台で生演奏してくださる大谷能生さんのクリスマスソングのサックス演奏があります!ぜひ余裕をもって会場に来てくださいね🌟


21日(土)15時、22日15時、26日15時の回の桟敷席は売り切れとなりました。関係者扱いのみ席がお取りできます。ご相談ください。桟敷席の割引はありませんが、指定席は関係者扱いで4500円→4200円になります。


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