突然始まったコロナの世界で、自粛中、zoomを使ったオンライン・リーディングを俳優のみなさんとライブでお届けしていました。一時は日本全国から本当にたくさんの親子が観客として参加してくださって、こんなことがなければ一生出会わなかったかもしれない全国のみなさんと、わずかな時間ではあっても読み聞かせを通して一緒に過ごすことができたのは、なんだかうれしいことでした。
自粛解除後は参加親子は少なくなったけれど、「オンラインリーディングの会(仮称)」は「あっとほーむしあたー」という名前に変わり、俳優のみなさんの意向によって、月に1、2回のリーディングはまだ続いています。とくに週末夜8時、どなたでも参加OKの「おはなしパジャマパーティ」は眠りにつく前のひととき、ゆっくりと横になって聞くおはなしの時間はとってもすてき。スケジュールとお申し込みは最近できたばかりの「あっとほーむシアター」ホームページ、またはFacebook「オンラインリーディングの会」専用ページから。

さてオンラインリーディングですてきな時間を過ごす間にも、うちの10歳くんはお腹痛い毎日を送り、自粛期間が過ぎて学校が始まっても、学校に行けない日が続いていました。
10歳くんのお腹痛いは今に始まったことじゃなく、3年前の、小学3年生の梅雨の時期からでした。最初はだいたいお腹痛いで始まって、1週間くらいすると頭痛いに変わることが多くて、長いと2ヶ月くらい学校をお休みするようになってしまいました。小児科に連れていくと「副鼻腔炎かも?」と抗生剤を渡され、それとカロナールをのませると、当時9歳くんの顔色はまっ黒になってしまい、一応耳鼻科で診てもらってくださいと言われて耳鼻科にいくと「副鼻腔炎ではないと思うけど、大きな病院で検査してもらってもいい」と言われたけど、なんだかそうじゃないんじゃないかという気がしてそれっきりにして、わたしが片頭痛持ちでそれは遺伝するというので、今度は頭痛専門外来でイブプロフェンという強い薬を処方されたり、でもどんな薬をのんでも10歳くんのお腹痛いや頭痛いは治りませんでした。それどころかどんどんひどくなって、最初は梅雨や夏、台風や気温差の激しい時期にでていた症状は、わたしが「青い鳥」の舞台の稽古と本番をしていた冬の2ヶ月の間も続いて、4年生の時はトータルで4ヶ月も学校を休み、やっとよくなって登校できるようになってきた矢先のコロナでまた学校がお休みになってしまい、自粛が終わって短時間授業だった2週間はひさしぶりの学校を楽しんでいたものの、梅雨と通常授業が始まると同時にまたお腹痛いが始まり、またお休み生活にもどってしまいました。
不吉なことにある小児科では「過敏性腸症候群」と診断され、「過敏性腸症候群は思春期にひどくなる」と予言されて、これ以上学校を休むようになったら10歳くんの人生は大きなダメージを受けてしまう、と思い詰め、とにかくなんとしても治療しなければと、やれることをやることにしました。
まず「過敏性腸症候群」と診断された1軒目の小児科では「効かないと思うけど」と整腸剤のようなお薬を大量に渡されましたが、もちろん効きません。2軒目の別の小児科では「自律神経疾患」と診断され、どうしてもお腹が痛い時に、と胃腸の動きを止めてしまう強い薬が処方されましたが、それでも効きません。
小児科はあきらめました。次に鍼灸がいいとどこかで聞いたのを思い出し、近くで小児鍼もやっている腕のいい鍼灸師さんを探して、ネットで何十軒もある鍼灸院のホームページと口コミをひたすら読み続け、たどりついた一軒の鍼灸院に10歳くんを連れていき、既往歴を書いて診察を受けると・・・

「原因として考えらえるのは2つ。0歳の時の離乳食のタイミングが早かったのと、0歳でかかったRSウイルスと、併発した中耳炎、それに使った抗生剤で胃腸が弱くなってその後も感染症にかかりやすくなった」というお話があった。まさにふり返ると思い当たる節があって、中耳炎は2歳のヒブワクチンを受けるまでかなり頻繁にかかっていて、0歳からずっと抗生剤を処方され続けていた。その後は「ヘルペス」にかかったり、「単純生股関節炎」にかかって再発して、一時は股関節の成長が一時的に止まってしまう「ペルテス病」の可能性も指摘されたけど、3ヶ月の経過観察の末、その可能性はなくなってホッとしたり、5歳頃からは食事にものすごく時間がかかるようになって、ひどいと2時間くらいかかる。今もそうだけど、とにかくちょっと食べるとすぐに「お腹が」と言って席を離れ、ごろごろと横になってしまう。それでまたちょっと経つともどってきて食べて、また横になって、を繰り返すこと1〜2時間。そして8歳から本格的な腹痛と頭痛で何ヶ月も学校を休むようになってしまって今にいたる。
鍼灸では「脈診」といって身体中の脈を診るところから診察が始まる。背中にきたとき、10歳くんはくすくすと笑い出した。くすぐったかったみたいだ。院長は「ハマったかな。このくらいの子どもって、一度ハマると止まらなくなるんですよね」と言って背中の脈診は中断。こういうくすぐったさや笑いも症状に関係していると後から聞いた。院長はとても丁寧にわたしの話を聞いて、鍼灸と食事での治療を説明してくれた。「小麦と乳製品と砂糖をやめてください。主食は玄米にして、発酵食品を多く摂らせること。キムチは果糖の入っていないもの、できれば市販ではなく焼肉屋が自家製で作ってるようなもの。それにザワークラウト・・・」
ハードルが高い。めっちゃ高い。。。
脈診の結果、やはり胃腸がかなり弱っているとのこと。胃腸が弱いと暑さや湿気が堪え難いほど体が弱ってしまうらしい。鍼灸と食事で胃腸を強くしていくこと。そうすれば湿気や暑さにも耐えられるようになってくる。感染症にかからなくなってきたらいい傾向、だそう。
そういえば、夫の実家の九州を親戚でよく旅行することがあったが、夏休み、いつも10歳くんは熱を出して、旅行を台無しにしてしまっていた。旅先は熊本が多かったけど熊本の暑さと湿気は関東の比じゃなかった。
それで梅雨とか台風の時期に症状がでることが多かったのか。。

それでとにかく食材と料理を考え始めた。ザワークラウトは市販のものは発酵してないらしく、手作りするしかなかった。キャベツまるまる一個千切りしてジップロックに入れて塩をふり、全体をよく振って常温で一週間、冷蔵庫で2週間置くと完成する。
パンも麺もダメ。玄米100%のパンと米麺を探し回る。大好きなラーメンはやめられないだろうから。そしてグルテンの少ない古代小麦のパスタ。牛乳大好きくんは牛乳もつらいな。。カルシウムどうやってとればいいんだろ。。。
小麦と牛乳をやめなさい系の本は見かけていたけど、まさか自分が関わることになるとは思ってなかった。
それから「抗生剤の影響」についてもっと知りたくなっていろいろ調べ始めた。
友人から勧められた邦訳されたドイツの「おしゃべりな腸」という本には、子どもに抗生剤を使うと2ヶ月経ってももとに戻らなかったという実験結果が載っていて、冷やっとした。それからいろいろな本を調べて、つい何年か前に「腸内フローラ」の存在があきらかになったとよくテレビで特集が組まれていたけど、そこから腸内環境の研究がだいぶ進んで、いろいろな病気の原因が腸にあることがわかってきた、ということがわかった。
小麦や牛乳をやめろというのはそこに由来する話で、小麦のグルテンや牛乳のカゼインは粒が大きく、腸の粘膜を傷つけたり、腸にすき間ができるリーキーガット症候群と言われる状態になっていると、そういう粒の大きなものや悪いものが腸を通過して体内に放出されてそれが原因で炎症が起こったりなにかの症状が出たりするらしい。
そうして調べるうちにわたしは抗生剤の乱用の本当の恐ろしさを知っていくことになった。抗生剤を使い続けると、抗生剤は腸内細菌には効いても、誰のお腹にもいる腸内真菌、つまり「カビ」には効かないので、菌がいない間にカビが増殖してアレルギーをはじめ様々な疾患を起こす、ということ。これには「頭痛」や「化学的な香りを嗅ぐと気分が悪くなる」「天気で体調不良になる」など、うちの10歳くんにあてはまる項目がけっこうあり、腸内真菌をうたがうようになった。腸内真菌を減らすための食事プログラムが本に掲載されていたこともあり、これを3週間、実践してみることを思い立つ。これは鍼灸院での食事指導よりさらにハードルが高い。わたしも「アレルギー性鼻炎」や「聴覚過敏」の症状があるので、10歳くんと一緒にやってみることにした。一人でやらせるのもかわいそうだったから。
甘味は砂糖どころかハチミツやオリゴ糖もNGで、可は羅漢果とキシリトール、ステビアだけというが、ステビアは不妊になるという話を聞いていたのでやめる。羅漢果とキシリトール、手に入るのか。。
ネットで見つけて購入、高い(涙)。ドレッシングも調味料もみんな手作りしないといけない。
カビを死滅させる食材もちょこちょこ一緒に使う。MCT、グレープシードオイル、オレガノ、ローズマリー、にんにくなどなど。
夏休みをかけて3週間。ちょうど3週間目の終わり頃、ある朝10歳くんは不機嫌に起きて「頭が痛い」と言ってばたっと横になり、そのまままた眠ってしまった。それからお昼頃まで起きなかった。それから頭痛が始まったけど、なんだかいつもの頭痛とちがう感じだった。顔色が悪くて、すぐに寝てしまう。
「ダイオフ」かもしれないと思った。カビが死ぬ時、中にためこんでいた重金属、水銀やアセトアルデヒドなどの有害物質を体に放出して、一時的に症状が悪化することがある、と本に書かれていた。
まさか、本当にダイオフなのか、と半信半疑ではあったけど、そういう時はそういうものを吸着する活性炭をのむといいというので、「キッズカーボン」という子どもがのめる活性炭(本来は添加物排出のため子ども用に開発されたらしい)をやっとネットで探し出して急いでのませた。それから鍼灸も受診してみた。腹痛の時には効いた鍼灸は、この頭痛には効かなかった。それから2週間ちかく、頭痛は少しずつましにはなったもののよくはならなかった。もしこれが本当にダイオフならば、素人のわたしの手にはあまる。。。

日本にも多少できつつあるという、腸内環境の専門医をネットで急いで探した。都内に何軒か見つけたけど、みんな遠い。。子どもも診るところはとくに遠い。一軒は世田谷にあって、やはり食事療法をメインにしたところで腸内真菌だけじゃなく、腸内環境全般について。自閉症、発達障害の食事療法による改善を目的にしている。
そう。抗生剤の恐ろしさはここにある。「自閉症」や「発達障害」の原因になっている可能性が指摘されているのだ。
「あなたの体は9割が細菌」というベストセラーの本がある。長くて専門的なことがたくさん出てくるから読むのにとても時間がかかるが、これは一読の価値がある、多くの人に読んでもらいたい本だ。
アメリカの、ある男の子が中耳炎とおぼしき症状で医者に抗生剤を処方される。その後も症状が治るまで、何度も抗生剤は処方され、その男の子は自閉症の症状がでるようになった。おかしいと気づいたのは母親で、その原因が抗生剤と破傷風菌にあったことをつきとめたのもその母親だった。その経緯が詳しく書かれていた。「手遅れ」の炎症もある。が、改善する症状もある。

抗生剤を子どもに与えると、腸の細菌は劇的に少なくなる。そうして2ヶ月経ってももとに戻らない。善玉菌も日和見菌も悪玉菌もいなくなって、荒れ果てた腸は「ディスバイオシス」という状態になり、ウイルスや悪い菌が体内に入ってきても、守ってくれる腸内細菌がいないので、感染症にかかりやすくなってしまう、そこにまた抗生剤を処方され、、、という負のスパイラルにおちいっていくのである。
うちの10歳くんも、まさにそんな状態だった。

同じ保育園で、おなじくRSウイルスにかかった女の子のお友だちのことを思い出して、今どうしているか連絡をとってみた。
「過敏性腸症候群」
おなじだった。それに吃音。
うちの10歳くんも落ち着いてしゃべることが苦手で、興奮気味に言葉をくり返すクセがあったけど、あれもそうなのか。

抗生剤は命を救う薬として開発されて、たくさんの命を救ってきたけれど、多くの中耳炎など、今は抗生剤の必要のない病気にまで、簡単に抗生剤が処方されてしまう。
子どもの病気がなかなか治らなければ、仕事に家事に忙しい母親は医者に抗生剤を出してくれと自ら頼む。
発達障害や自閉症は増え続けている。
もちろんすべてがそうとは限らないだろうが、この因果関係がやっと明らかになろうとしている。

ダイオフかもしれない症状の10歳男子を連れてわたしは、都内のクリニックに向かった。そこは産業医で本来子どもは診ないけれど、特別に診てもらえることになり、ホームページにあった料金表に目が飛び出たけれど、コロナ給付金をあてることにして、覚悟して向かった。
先生はとにかくよく話を聞いてくれて、腸内の乳酸菌を増やすサプリと、消化酵素を処方して、腸内真菌と遅延型アレルギーの検査を受けるかどうかをわたしにたずねた。遅延型アレルギーとは、食べてすぐに症状がでるのではなく、時間差があってでるわかりにくいアレルギーのことだった。
両方受けさせてみることにした。尿検査と採血だった。日本ではまだ検査はできないようで、10歳のおしっこと血はアメリカに送られていった。

それから。もちろんすぐに頭痛は治らない。でもなんとなくいつもの頭痛にもどってきたような気がして、もう一度鍼灸院を受診してみた。一応、都内のクリニックを受診して検査を受けたことを院長に報告すると、なんだか不機嫌な様子になってしまったけれど、脈診をし直して「ストレスはないって言ってましたよね?」と聞いた。わたしは10歳くんには学校でのストレスはないと思っていたし、本人もそう思っていた。授業はきらいじゃないし、お友だちもしょっちゅう遊びにいったりきたりして楽しげに遊んでいる様子をよく見ていたから。わたしと10歳くんは顔を見合わせた。院長は「ストレスですね」と言い、ストレスのツボに鍼をいつもよくずっと強く刺してちょっと痛そうだったけど、するとあっという間に10歳くんの頭痛は消えていった。
わたしも10歳くん本人もあぜんとした。院長は「今日はこれで終わりです」というといつもならば鍼の後にするお灸もなしで、短い診療は終わりになった。
それから毎日ストレスのツボに家でお灸をして、もう頭痛がでることはなくなり、ここ2週間ほど、今年初めて学校に毎日登校できている。
季節も暑さと湿気がひいたせいもあるかもしれない。でもこのあいだの台風の後は、いつもなら腹痛か頭痛で学校を休んでいるところを、学校から帰ってきて「もうダメ。。。」とちょっとくたばってたくらいですんだ。
鍼とお灸と、食事療法と、乳酸菌生成サプリと消化酵素、みんなが力を発揮して、10歳くんの体を少しずつ強くしてくれているのかもしれない。

ネットや本を調べて調べて、探し回って探し回って、作って作ってまた調べて探して作って、、、6月くらいからずっとそんな日々だった。そしてやっと学校に行けるようになって、ホッとして、今度はちょっとわたしの方に疲れがでてダウンしている。でもそろそろ立て直し。
ハードな食事療法は続けなければならないけど、最初に比べたら少しは慣れてきた。かな。腸を強くするために動物の骨を6時間以上煮だしたスープを毎週作って朝晩のませる。これが腸の粘膜を修復してくれるらしい。ただし、抗生剤を使っていない安全な動物の骨にかぎる。ということでこれまた探すのに一苦労だけど。。。

そしてアメリカに送られた10歳くんのおしっこと血液の検査結果がでるのはもうすぐ。