小児科で「過敏性腸症候群」とか「自律神経疾患」とか診断され、原因も治療法も不明、小さい頃から虚弱体質で感染症にかかりやすく、3年生頃からお腹が痛い、頭が痛いで学校を何ヶ月も休むようになっていた10才男児くんはコロナ禍でふたたびお腹痛いと頭痛いがひどくなっていった。
過敏性腸症候群と言っても、下痢も便秘もしていない。10才くんはただただお腹が痛いだけなのだ。
「過敏性腸症候群は思春期にひどくなる」という小児科の先生からの予言を受け、小学生のうちになんとかせねばと思い立ち、あれこれ調べ、鍼灸医院を受診、そこで「原因は0才の時にかかったRSウイルスと併発して何度もくり返した中耳炎、そこでくり返し使った抗生剤」と聞かされ本当に驚く。が、小さい頃からの虚弱体質が初めてそこでつながって納得した。

腸に関する本を読みあさった。ドイツの腸研究者の「おしゃべりな腸」で子どもに抗生剤を使うと2ヶ月たってももとに戻らなかったという研究結果を知りぞっとする。ベストセラーにもなった「あなたの体は9割が細菌」で、鍼灸医院の先生の言葉を確信した。
そういえば同じ保育園にやっぱりRSウイルスにかかったお友だちがいたことを思い出してひさびさに連絡をとってみる。なんとその子も現在「過敏性腸症候群」、そして喘息と吃音。
さらにほかの知り合いからも0才でRSウイルスにかかって以来ずっと虚弱体質のお友だちがいるという話を聞いた。
RSウイルスは1才すぎてかかればただの風邪、しかし0才でかかってしまうとほとんどは入院、さらに喘息になる可能性がとても高いというとても怖いウイルスで、うちの10才くんはその時かかった小児科の先生が勉強熱心で、最新の薬を処方してくださり、喘息をまぬがれた上に入院するほどの事態にならずにすんでいた。でもその時から中耳炎をくり返し、月に何度も小児科に足を運ぶことがあった。
抗生剤を使うと、体を守ってくれる善玉菌も激減してしまうのでかえって感染症にかかりやすくなってしまう。それを知らずに、ちょっと病気をして抗生剤が処方されないと症状が長引くので忙しい親は自ら抗生剤を要求してしまう…。くり返して使用される抗生剤は自閉症の原因にもなっている。

10才くんが0才くんから2才くんだった頃、どれだけたくさんの抗生剤をのんだか、、、そう思うと血の気がひいていくようだった。小さい頃の10才くんの腸は抗生剤の多用で多様性が失われ、きっと「ディスバイオシス」といわれる状態になっていた。
鍼灸医院の先生は「胃腸が弱ってますね。胃腸の弱い人は暑さと湿気に弱いんですよ。でも食事療法も続けて強くなればそのうち拾わなくなりますから」「感染症にかからなくなってきたらいい印」とおしえてくれた。コロナ給付金をつぎこんで鍼灸医院に週1で通い、全く行けなかった学校にも週の半分くらいは行けるようになってきていた。

同時に腸のことを調べすすめ、抗生剤は腸の真菌つまりカビには効かないので、抗生剤をくり返し使っている人は腸のカビが増殖してさまざまな炎症を起こしている可能性があることを知る。
カビを殺す3週間の食事プログラムを夏休みに実行して、カビが死ぬ時アセトアルデヒドなどの有害物質を放出するために一時的に起こる「ダイオフ 」現象のような頭痛が続いたので心配になる。やはり専門家のアドバイスが必要、とネットで腸内真菌も診てくれそうな都内のクリニックを探して受診。そこで腸内真菌と遅延型アレルギーの検査を勧められ、おしっこと血をとってアメリカに送る。自分の腸の善玉菌をふやしてくれる乳酸菌生成エキスと消化酵素を処方してもらう。
頭痛はその後いつもの慢性的な頭痛の様子になり、鍼灸医院でストレス性と診断され、ストレスのツボに鍼を打ってもらうと頭痛はあっという間にひいてしまった。ストレスはないと思い込んでいた10才くん本人もわたしもびっくりしてしまった。10才くんはそれから毎日学校に行けるようになっていった。

約1ヶ月ほどして、アメリカに送ったおしっこと血の検査の結果がでた。
心配していた腸内真菌は正常値の範囲。「食事プログラムやったから死んだかもね」と先生が言う。
ビタミンB6とタンパク質が足りていなくて鬱っぽくなってたらしい。たしかにこのところの10才くんは鼻先に人参をぶらさげても見向きもせず、いつもどこかぼんやりして、外の世界にもあまり興味を示さなかった。「食べる量が減っていたせいもあるかも」先生が言う。セロトニン値も低かった。

そして遅延型アレルギー。
あんまりたくさんの食べ物に抗体ができてしまっていてほんとに驚いた。とびぬけていたのは小さい頃から大好きな牛乳だった。
「遅延型アレルギー」というのは、摂取してすぐ症状が出る「即時型アレルギー」とちがって、摂取後しばらくたってから症状がでるのでわかりにくいアレルギーで、実は日本でも多くの人が持っているらしい。「これまでの不調には牛乳が関わってたかもね」と先生が言う。
ほかにも卵白やえんどう豆(この2つは日本人はでやすいらしい)、寒天(あとで焼き海苔とわかった)、カレー粉、アーモンド、オレンジ(たぶんみかん?)、マスタード、大麦、醸造発酵食品(醤油、かつおぶしなど)などなど。これらの食品を半年間ほど避けなければならない。半年間で抗体数が変化するということで、半年後にまた少しずつ、様子を見ながら摂取してよしになる。
栄養指導の先生から、卵白NGなら栄養の多い卵黄を2個ずつ食べさせるといい、というアドバイスをいただく。それほど抗体が多くなかった小麦もNGなのは、牛乳のカゼイン同様、小麦のグルテンが傷んだ腸をさらに傷つけてしまい炎症を起こしてしまうから、ということだった。
帰ってアレルギーがあった話を10才くんに告げると牛乳のところで泣き出した。知り合いの中学生は「牛乳やめるくらいなら今の(過敏性腸症候群の)ままでいい!」と言ったらしい。

鍼灸医院の指導でも小麦、乳製品、砂糖、冷たいもの、精製されたもの、添加物NGという食事療法を続けてきたけど、さらに食べられるものが減ってしまった。
麺類はダメ、食べられる主食は玄米と小麦粉不使用の玄米パンだけ。乳製品も卵白もダメ、豆もえんどう豆っぽいものはダメ。食べられるのは砂糖の代わりに羅漢果やキシリトール、はちみつやオリゴ糖を使ったザ・和食のみ。
ネットや実店舗をまわって玄米の麺やパスタ、食べられそうなおやつや食材を探す。外食も買い食もほぼNG。毎日の食事にものすごく頭を使うようになった。そして外食や買い食で料理を休めないのもきつい。

「遅延型アレルギー」についてさらにいろいろ調べていると、「リーキーガット症候群」という言葉がよくでてきた。腸はふつう網戸みたいになっていて取り込んだものを通さないようになっているらしいが、リーキーガットはその網戸が壊れてスキマから未消化の食べ物や体に入った悪いものが漏れてしまうらしい。すると漏れたものの抗体ができてしまい、それが遅延型アレルギーで抗体ができている食べ物、ということらしかった。
そうなんですか?とクリニックの先生に聞いてみたら、抗体のできてる食べ物がこれでも少ない方なので10才くんはこれでもそんなにひどい炎症ではないと思うという答えが返ってきた。
リーキーガットについてのデジタル書籍も読んでみた。今のところ食事やサプリで治していくほか方法がないらしい。動物の骨を6時間以上煮出した骨髄液のスープがいいらしく、牛や鶏、鹿の骨を週に一回煮出して朝晩飲ませる。
一週間の食事内容の記録を提出したら栄養士さんにとても褒められた。細かい油の種類なんか以外はほぼパーフェクトだったらしい。でもお母さんの方が倒れないようにしてくださいね、と言われた。お母さん倒れそうです。。

ふと思い立って「過敏性腸症候群」と「リーキーガット症候群」という言葉を検索ワードにそれぞれ検索してみた。「過敏性腸症候群」を扱うクリニックと、「リーキーガット症候群」を扱うクリニックがあった。
「過敏性」の方は、原因も治療法もわからないとされることが多いけれど、「リーキーガット症候群」の方は食事療法や栄養剤などで治療可能。そして過敏性の中にはリーキーガットが多く含まれているらしい。「リーキーガット症候群」はまだ発見されて間もない症候群で、日本にもやっとこの病気を扱う専門外来ができてきているがまだまだ一般的ではないみたいだった。

10才くんはと言えば9月からはほぼ毎日登校できている。ただし無理をしたり、給食を食べ過ぎたり、外で食べられるものがなかった時にNG食品を食べてしまったりして、週1回くらいのペースで休んだり、遅刻したりはしている。
でも風邪をひけば小児科に受診して薬を処方してもらわないと治らなかったのが1日休んだだけで復活できたり、念願だったスポーツの習い事も始めることができたり。ミトコンドリアも少しは増えてきたかもしれない。

それにしてもきついのはこっちで、更年期の症状が始まっているので、そういう時に時々重なる10才くんの体調不良のケアと食事作りが本当にきつい。
しかし食べ物の世界は本当に奥深くて、風邪に効くもの、更年期に効くもの、胃腸に優しいもの、下痢に効くもの、疲労に効くもの、いろいろ調べていくうちに薬膳にまでたどりついた。
たったひとつのビタミンとタンパク質が足りないだけで鬱になる。アレルギー、肥満なんかの21世紀の慢性疾患の原因はほぼほぼ腸の状態にあることも知った。
牛乳で摂取できるカルシウム量については諸説あるものの牛乳なしになった10才くんはたぶんカルシウムが足りないだろう。なにでカルシウムをとったらいいのか。しかもカルシウムはマグネシウムとビタミンDと一緒にとらないと摂取できる量が減ってしまう。運動始めたからへたしたら骨折もありうるかも…。
最近わたしの頭の中は常に栄養素のことでいっぱいになっている。

同時にお灸の勉強もしてみた。実際に更年期の症状がひどい時にお灸してみたらあっという間に症状がやわらいだのにはびっくりした。ツボ押しも意外と効く。

まもなくオリンピックが開催されるはずだった2020年も年末。夫が応募していくつかの競技のチケットが当たっていたけど、それも払い戻しになっている。学校関係もあらゆるイベントが中止になった今年はなんとなく思い出が少ない。自粛の終わる梅雨の頃からはずっと台所に立ち、食材を探し求め、パソコンとにらめっこしていた。

コロナ元年(?)は思わず健康改革の年になりました。
1年経った頃を想像しながら、1日1日、今日の小さな積み重ねを大切に。