阿部初美のブログ

演劇の演出家です。

高校演劇

勿来高校・演劇部

ここ2週間ほど、いわき・川崎・福岡を行ったり来たりしてました。で今日はひさびさのオフでした、がたまった家事を片づけたら、もうすっかり夜です月

2週連続で訪ねたのが、福島県いわき市の勿来高校。目的は、演劇部対象の演劇ワークショップでした。
昨年秋のいわきアリオスでの『アトミック・サバイバー』、今年1月のいわき総合高校アトリエ公演の演出で、すっかり愛着のわいているいわきですが、勿来(なこそ)は一番南に位置する地区で、平(たいら)と呼ばれる市街地から車40分くらいのとこにあります。
学校この高校演劇ワークショップは、過去4年、山口県山口市で行っていたワークショップ(山口情報芸術センター主催)と同じシリーズで、今回の主催はいわきアリオスです。

クローバー4月のいわきは山の新緑が美しくて、空がきれいで、もしかしたら一年で最高の季節かも。
勿来高校演劇部の正式部員はたったの4人だったけど、入部を検討しているという高校生も含めて、毎日6、7人でのワークショップになった。
人数は少ないけど、顧問の松本先生を含めみんな積極的で、とっても充実したワークショップになった。
まずは初日の顔合わせで、ふだんの部活動で困っていることを聞く。
発声練習の方法がわからない、どうしたら面白い本が書けるようになるのか、演技がうまくできない、などなど。それらの困りごとを解決すべく、6日間のワークショップの内容を組んでいく。アシストしてくださるのは71才ベテラン俳優のノム(野村昇史)さまで、若い子と一緒にできて楽しいよーとお喜びのご様子。
部員のうち2人は声優志望で、山口でもそうだったけど、最近は中高生に声優志望の子が多い。俳優になりたいという子も多くて、どうしたらなれますかと質問されることも多いけど、そういう時わたしは、たいていは厳しい現状を具体的に話してやめるように説得する。
でもそれでもあきらめきれないという子のことは止めない。それくらいのモチベーションの高さと覚悟が必要だからだ。
で、いつも困らせられるのは、声優志望の子たちのアニメ的発声である。
口先だけの強い節のついたもの言いは、相手役になにかを伝えるための発語ではなく、それっぽく(アニメ声優っぽく)作り声でしゃべる自分に満足するための発語なのだ。
演劇の演技はたいていアンサンブルが大切なので、これを直すのに一苦労。。。
でも6日間のワークショップを通して、彼/彼女らは大きく変化していった。
ふだんの自分の行動や考え方に疑問をもったり、新しい自分に出会ったり。
「自分について、たくさんのことに気づいた」
高校生の変化や成長ははやい。

ワークショップのついでに、ひさしぶりにいわき総合高校を訪ねると、つい最近まで2年生だった10人はもう3年生になっていて、みんななんだかひとまわり大きくみえた。
演劇を通して、彼/彼女らも成長したのだ。
こういう姿を見るのがとにかくうれしい。
石井先生ともひさびさに再会ハート

最後は勿来の関の湯温泉大波大波オーシャンビュー!)につかって、地元スーパーのマルトで福島の地場野菜をたくさん買い込んで帰りました。チューリップとにかくおいしいんですよ~、野菜が(JA直売所の方がもっとおいしいそう、どんなだ!?)。魚がもって帰れないのが残念ですが魚

いわきのみなさん、今回もいろいろお世話になりました。
お互い元気で過ごしましょう、またよろしくお願いします~。


「世界の終わりとショートケーキ」終了

いわき総合高校アトリエ公演を終えて、昨夜いわきから帰りました。

まず、ご来場いただいたお客様には、不完全な形の作品をお見せする事態になってしまったことをあらためてお詫びいたします。
そして、にもかかわらず最後まで作品を鑑賞してくださったことに感謝いたします。

GP前日のある事件がきっかけとなり、GP終了後、出演予定だった生徒の一人が出演できなくなり、初日の朝、急遽その生徒をのぞいて残った9人と全シーンを作り直すというありえない事態が起こりました。
全員で話し合いのすえ、公演の決行を決めました。苦労して一緒に作品を作ってきた10人全員で、上演できなかったことはとても悔しかったです。
でも残る9人が、初めての舞台、一人仲間が欠けてしまったこと、初日の後の事故など、たくさんの困難に動揺しつつも、それを乗り越えて、最後までがんばってくれたこと、そしてこの経験を通して成長してくれたことが救いでした。みんながとても頼もしく思えました。
みんながこれからまたどんなふうに成長していくのか、どんな道を歩んでいくのか、とても楽しみです。
わたしも今回は、いろんなことを学びました。
この経験は今後の活動に必ず生きると思います。

そしていわきのおいしい食べ物、豊かな自然や温泉とのお別れもとってもさびしいです。
でもかならずまた会いにいきます。

石井先生、谷代先生、そして10人の系列2年生に心から感謝です、本当にありがとうございました。
自分自身もふくめ、全員の「健闘を祈ります」(!)。



演劇をすることの意味

昨日は川崎市アートセンターとの打ち合わせのため一時帰京。
センターのみなさんとは「アトミック・サバイバー」ツアー以来、みなさんお元気そうで何よりでした。

さていわき総合高校アトリエ公演の当日パンフ原稿も書き稿終わりました。
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演劇をすることの意味                               

いわき総合高校との出会いは、昨年2008年秋に、『アトミック・サバイバー』という作品を、いわきアリオスで上演したことがきっかけでしたが、演劇を授業に取り入れている学校が日本にもあることを知り、とても嬉しく思いました。
というのも、先進諸国では「演劇は教育に不可欠」という認識はごく一般的で、演劇を学校教育に取り入れている国も多いのですが、日本では、「河原者」や「左翼」など、国の「体制の秩序を乱す表現活動」として危険視された歴史などもあり、今だにその価値は低くさしおかれ、演劇の持つ教育的な機能も、ほぼ生かされずにいるからです。
演劇は、人間の在り方を描く表現ジャンルです。シェイクスピアは、世界を鏡のように映し出すのが演劇の使命だと考えましたが、鏡は、人に「己の姿を認識させる役割」を持っています。有史以来、人間は理想の社会を実現しようと、さまざまな改革を行ってきましたが、いつの時代も、人々の間の矛盾や葛藤や対立はなくなることはありませんでした。演劇は、それらを鏡のように映し出し、人々に己の姿を認識させることによって、「気づき」をもたらし、次の時代へと人々を推し進めていく機能も担ってきたのです。
「現実の認識」を深めるためには、まず現実を「よく見ること」から始めなければなりません。ふだん気にとめない自己や他者の心の動きや体の振る舞いを、立ち止まってよく見ること、なぜそうなのか考えてみること、それをよく見える形で表現し、他者と共有すること、これが演劇の作業です。そのためには、自分をさまざまな「抑圧や緊張から解放」する必要がありますし、また共同作業の相手と、うわべだけでない「コミュニケーション」をしなければなりません。そして、他者の立場に立って、物事を考える「想像力」や「分析力」、またそれを的確に心と体で「表現する力」も必要です。もうこれだけでも、演劇がなぜ教育に役に立つのか、お分かりいただけるのではないかと思います。社会で他者とともに生きていくのに必要なことばかりですね。そして、演劇を学ぶということは、人間の生き方や社会を学ぶことに等しいのです。

今回の作品作りの過程で、「系列・演劇」の2年生たちとも、以上のような作業を行ってきましたが、この間、彼女/彼らは、ふだんの生活ではありえないような密度で、自己や他者と懸命に向き合い続けてきました。
この『世界の終わりとショートケーキ』は、彼女/彼たちとの対話や即興などの共同作業を通して、現在の高校生の抱える問題をテーマに作り上げた作品ですが、創作の間には、高校生の問題の背景にある、現代の大人社会が抱えている問題にも思いをめぐらさずにはいられませんでした。
テレビドラマのようにはっきりとした筋立てや起承転結はなく、現実には起こりえないようなことが起こる、まるで「夢」のような作品ですが、お楽しみいただければ幸いです。

このような充実の時間をいただけたこと、また、演劇教育の意味を熟知し、日頃から熱心に学校での活動に取り組まれ、今回の創作にあたっても多くの助言とご協力をいただいた石井路子先生、そして温かく現場を見守り、進行を支えてくださった谷代克明先生に、心から感謝いたします。
  

新作公演@いわき

今年からやっとブログ始めます、よろしくお願いします。

ただいま、福島県いわき市に滞在中、いわき総合高校・総合学科2年生のアトリエ公演の演出の仕事をしています。出演は2年生10名、彼/彼女たちとの対話や即興を通して作品を作っています。
KY、キャラ分け、ロリータ、アニメ、未来への不安・・・
等身大の高校生の物語、といっても起承転結のはっきりした「ドラマ」ではなく、イメージの断片をつなげた、比喩的な表現の多い、「夢」のような作品です。
本番まであと1週間、追いこみ中です。

近くには、スパリゾートハワイアンズ、湯本温泉郷、小名浜(魚おいしい)、草野心平記念文学館、いわきアリオスなど、観光スポットもたくさん。
http://www.kankou-iwaki.or.jp/
観光がてら、ぜひお越しくださいませ。


詳細)

福島県立いわき総合高等学校 総合学科第6期生 アトリエ公演

『世界の終わりとショートケーキ』

構成・演出 阿部初美
演出補・ドラマトゥルク 石井路子
テキスト・出演 芸術表現系列(演劇)第6期生(10名)

◇日時:2009年1月31日(土)~2月1日(日)
13:30開場 14:00開演
◇会場:いわき総合高等学校 演劇演習室(校舎 3F)
アクセス:常磐線「内郷」駅(いわき駅隣)徒歩7分
http://www.iwakisogo-h.fks.ed.jp/img/iwakisogo_map.gif
◇入場無料 
※座席数に限りがございますので、事前に整理券をお申し込み下さい。
尚、整理券は各日90名様までとなっております。

◇お申し込み・お問い合わせ
Tel 0246-26-3505 芸術表現系列(演劇)石井・谷代まで




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